第59話 キャンプはカップラ‼️

 グレイブズ子爵とやらは、なるほど、嫌なヤツだった。


 通学に使っていた満員電車。

 どさくさで触ろうとするおっさんは結構いた。

 

 彼はモロにこのタイプだ。

 女と見れば手を出したい。


 『子爵』って身分がどれ程のものか知らないが、立場が高いから余計調子にのる。


 自分達以外を、同じ人間だと思っていないのだろう。


 アタシといちごは、敢えてアイテムボックスを使わなかった。


 アイテムボックスは、勇者限定なんだって。


 あくまで終の助手のふりで、子爵のタウンハウスの荷物を、終のアイテムボックスに収納する。


 「2人も女を連れて、羨ましいな、勇者殿。」


 「野営の時に1人貸してくれ」まで聞こえてきて、

 『最低だ』って思ったよ。


 移動は馬車だ。

 

 アタシ達は護衛だから、馬車には乗らずに歩いて進む。


 「乗っていけばいいのに。」

 うん、気持ち悪い。


 馬車は乗り心地を考慮してか、あまり速くは進まない。

 人間の早足程度。


 そして、ずっと引きこもっていて気付かなかったが、歩いてみて、自分の基礎能力がかなり上がっていたと分かった。

 

 これが世界の壁の効果なのか?


 野営のテントは3つ。


 アタシ達護衛のテントと、子爵達のテント、子爵の従者のテント。


 テントが、あまりにも『テント』で驚いた。


 「さすが、10年前から召喚勇者のいる国‼️」

 いちごが騒いでいる。

 なるほど。


 子爵は、20代に見える息子と、その嫁を連れだっての移動だった。

 

 いつの間にか『鑑定』したらしい。

 「あの親父の嫁は病気で亡くなってる。あの息子は長男で29。あと、領地に25の次男と、7つの三男がいるね。」


 今回は嫌なヤツが相手だから、全く手加減する気が無いらしい。

 『鑑定』怖。


 それぞれのテントに、終が結界魔法をかけた。

 盗賊対策だが、子爵対策でもある。

 特攻かけて来そうだ、あの親父。


 テントに入って、他人の目を気にしないでいいようになってから、

 「やっぱキャンプはカップラでしょ⁉️」と、いちごがカップ麺を出してくれた。


 「うわっ‼️懐かしい‼️

 俺、カレー‼️」

 「アタシ、シーフード‼️」

 「んじゃ、私が醤油か。」


 お湯は、これが生活魔法と言うものか?

 それぞれで出した。


 食べ終わり、

 「んじゃ、行ってくる」と、いちごが言う。


 「?」

 「ほむらのラッキーに防がれているだけで、さっきから盗賊っぽいのがジタバタしてる。」

 「え?」

 「ああ、気配感知でね。半径500メートルくらいより近付こうとすると、穴にハマったり、トゲだらけの木に邪魔されたりしてる。」


 「ちょっとポコッて来る」と、いちごが出掛けた。


 アタシは基礎能力が上がっているとは言え、久し振りの外に少し疲れて……

 爆睡‼️


 翌朝全部で15人の盗賊一味が、テントの外で縛られていた。

 

 

 



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