第60話 人生をなめまくった貴族を終わらせた件

 まったくスキルってヤツは意味不明だ。


 私の『食料召喚』しかり。

 何でそうなるのか?何でそれが可能なのか?

 合理的な説明はまるで無い。


 唯一の論理が、魔力と等価交換である事実。


 ならば、ほむらの魔力も相当強いはずだ。


 半径500メートルで敵の侵入を防ぐ魔力。

 いや、彼女の場合、吸いとった『運』を利用するから、それには当たらないのか?


 魔力感知は、城下町全体に広げられた。

 気配感知も多分同じくらい広がる。


 ならばと、少し離れた位置でバタバタしている盗賊達を『鑑定』すると。


 ……

 「へぇ。」


 面白いことが分かった。


 確かに彼らは、向かっている先のグレイブズ領の方から現れている。


 本当にロクなヤツじゃないな。


 納得のサイテー子爵様に、少しは手加減してやろうかと、思う気持ちが消えていく。


 ……

 いや、手加減はするよ、殺しちゃうし。


 半分くらいの力で、王宮騎士のウォルター君は無力化出来た。

 

 今回は素人に毛が生えたくらいだし、3分の1か、それ以下くらいで‼️


 私は自ら盗賊集団に飛び込んで、5分ほどで制圧した。


 そして翌朝、

 「え⁉️いったい何が⁉️」と、寝起きドッキリに茫然自失する子爵様。


 そら、何1つ予定通りにいかない上に、縛られた盗賊達の代表のように……

 いや、間違いなく彼が代表だが、1番前に引きずり出され、殴られて顔が腫れ上がっているのが息子なら。


 「昨日から馬車を狙っていた盗賊団だ。」 

 「え?いや、何かの間違いじゃないか?その男は……」

 「あなたの次男のマルク・グレイブズ、25歳で、他のメンバーも、借金や某かの貸しで縛ったグレイブズ領の良民ですね。」


 スッパリ言い当てると、さすがに何かがおかしいと気づき始めた、子爵の視線が小悪党のそれだ、ウロウロと落ち着かない。


 「あなたはなめてくれたみたいだけど、私は勇者。こっちのほむらも勇者で、異世界人ね。」


 おい⁉️

 せっかく決めてるんだから、早朝だからって欠伸は止めよう、ほむら。

 まだ、寝足りないんかい⁉️


 「あと、私は鑑定を持っている。」

 告げた途端、子爵の顔色が無くなったよ。


 鑑定結果は、終と共有してある。

 

 「まあ、俺が勇者なのになめられるのも悪いんだけどね。

 子爵、あんたには道が2つある。

 1つはあくまで自分は知らなかったことと言い張り、息子含め盗賊達を処刑台に送る。ああ、盗賊行為は死刑だし、ね。

 ワンチャン、貴族なら平民落ちですむけど、そこに息子が絡んでいたら、あなたの罪も露になるし。」


 持って回った言い方に、そして間違いなくそれを選ぶタイプなんだろうな、盗賊団が騒がしくなる。


 「勘弁してくれ‼️俺は借金のかたに頼まれただけだ‼️」

 「死にたくない‼️」

 「親父ぃ‼️」

 「馬車を襲って、勇者は無理でも従者の1人に傷でもつければ、賠償金が取れるって‼️」


 言われて回りも気付いたらしい。

 従者の中に、明らかにそれ用の若者がいる。


 子爵の従者は護衛も兼ねる。

 敢えて1人だけ未熟な若者を入れたわけは、つまり生け贄……


 ただ誤算だったのは、その若者は、周囲の仲間に愛されていたこと。

 自分の役割を知りフラつく彼と、主人を怒りの目で見る従者達だ。


 「あーあ、ここまで出てくれば第1の手は使えないな。」


 いやいや、終さん、知ってたじゃん。

 

 ちなみに、若い従者を選んだのは長男。

 家族中真っ黒じゃんか‼️


 「この件は王宮に報告します。

 子爵、あなたは引退で、長男、次男は当然廃嫡。三男に領地を継がせ、年が若過ぎるし王宮から代官が来る。

 これでいいでしょう。」


 結構優しい結論だと思っていると、権力欲、物欲の鬼である子爵自身が、

 「いや‼️それは‼️」と、何か言い返そうとする。


 根性スゴいな。


 私はポケットの無限スマホを取り出した。


 「あ、世奈?

 ……うん、うん。

 そう。予想通りロクでもなかったから、グレイブズ子爵。

 うん、うん。

 饅頭に報告しといて。」


 全員あっけ。


 いや、時代がズレているし、終はわかる。

 ほむら‼️あんたも知らなかったんかい⁉️


 「えー⁉️何で使えるの、スマホ⁉️」

 「知らん。世界の壁越えたらこうなった。充電減らない。」

 「うわっ、アタシ、カバン駅に落としてきたよ‼️うわー、腹立つ‼️」


 大騒ぎのほむらは、急に空に向けて指鉄砲を構えた。


 「じゃ、スマホを無くした悲しみと、デモンストレーションのために。」


 いや、ほぼ八つ当たりですよね、それ。


 「レーザービーム‼️」


 医者じゃないし、『メス』は止めたんだな。


 指先から出た光が空中を切り裂く。


 さすがの光魔法MAXに、子爵が腰を抜かした。


 王宮周りだけじゃ気付けない、結構問題があるんだな、この世界。


 私はいつか帰りたい。

 この世界には残らない。


 なら、

 「後は残る人に任せるよ」と、終の肩を叩いた。


 それに彼は苦笑いで答え……


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る