4章 王宮とアホ貴族とドラゴンと

第61話 遅ればせながら、勇者のお仕事始めました by 29号

 ハイが生まれて、1ヶ月経った。

 

 と言うことは、うちがこの世界に召喚されて2ヶ月、千夏さんやいちごさんと出会って1ヶ月と言うことだ。


 この1ヶ月は……


 濃かった。

 マジ、濃かった。


 いや、2ヶ月前に『異世界召喚』されたこと自体、特大に濃い事件だったけど。


 本気で1人で育っていくつもりだったから、雑でいい加減で、全然頼りにならないのにものすごく頼りになる、千夏さんといちごさんのコンビに出会えたことが最大の幸運だった。


 そのあとはドラゴンに会った?り、朔夜君、健介さん、正直さんの勇者トリオ、プラスこの世界の子供であるリーシャちゃんに会ったり。

 引きこもり勇者だったらしいけど、結構元気でいかにも元女子高校生なほむらさんに会ったり、普段は図書館で研究ばかりらしい、千夏さんが『唯一の外国人勇者』って言ってた、雨月さんに会ったり。


 そう言えば、もう1人同じ城下町にいるらしい、3号勇者の終さんには会っていない。

 少し前にいちごさんとほむらさんも協力して、地方の貴族を『ざまぁ』してた。


 勇者活動?しているなぁ。


 うちは子育てで目一杯で、そう言う『いかにも』みたいな活躍はしていないので少し気になったりは、正直する。

 けれど今は、

 「世奈は子育てと家事全般で。」

 「うん。マジ才能無いから、私ら。」

 「……巻き込むな、いちご。」

 「千夏に出来る家事があると思えない」と、漫才みたいに頼んでくれる、始まりと終わりの勇者に甘えている。


 いや、家事全般が苦手なのは間違いないし、気を使っているわけでもなく、ただただマジで言っているとわかっていたが……


 いや、本当、こういう人達で良かったよ。


 そうしてハイの世話に集中して1か月。


 最近……さすがに戸惑う……


 ハイ、君ちょっと、大きくなるの早過ぎない?


 「でかいな、ハイ。」

 歯に衣着せずな感じが、いちごさんで、

 「おい、……いや、でも……でかいか、やっぱり。」

 嘘が言えない感じが千夏さんだ。


 通常生後1か月で、ゴロゴロ寝返りをうったり、ズリ這いなんて始めません。

 首完全に座ってるよね?

 重いんだけど、かなり……


 「多分生後半年ってレベルだね。」


 最終的に千夏さんがまとめた。

 原因は、少し前にいちごさんから聞いている。


 「勝手に鑑定してて悪かったな。ただ、ハイって『勇者プラス』みたいなんだ。」


 ハイが生まれたての頃、もしかしてと鑑定したらしい。


 うちと共に(体内で)世界の壁を越えた息子は、問答無用で勇者だった。


 そら異常成長も納得だわ。


 生後1か月なのに、そろそろ離乳食を始めねばと思っていると、

 「ん。これ、朔夜に作ってもらってきた」と、千夏さんがアイテムボックスから出したのは、いわゆるベビーカーだ。


 「うわっ‼どうしたんですか、これ?」

 「素材さえ渡せば簡単に作るよ、あのメンツは。」


 ゆえに、現代日本ならビニールシートな部分がオーク皮だったり、アルミの骨組みがオークの骨の加工品だったり、若干おかしいがベビーカーはベビーカーだ。

 早々と縦抱き可能となった息子と、これで楽々お出かけできる。


 「で、これから毎日、世奈に頼みたい仕事があるんだ。ああ、雨とかなら無理に出なくていいから。」


 ニッコリ笑って頼まれたのは?


 「あっ、世奈さんだぁ‼」

 元気いっぱい、駆け出してきたのはリーシャちゃんだ。


 あれから毎日、うちはハイの散歩がてらベビーカーを押す。

 行先は結界の教会。

 朔夜君達が国の結界を管理し、同時に新しい返還の魔道具作りをしている 王宮に近い建物だ。


 そこで、

 「鉄壁‼」を発動する。


 スキルの効果は24時間くらいは続くので、無頼の輩に結界を壊されないように対策する、これがうちの勇者活動事始めとなった。

 

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