第55話 問答無用で運が悪い人

 「あははは‼️変わらないねぇ、3号‼️」

 千夏が、珍しく手放しで笑った。


 カオスだ。

 訳が分からない。


 市場の一角にある、3号勇者の店をみんなで訪ねた。

 「こんにちは。誰かいないの?」


 声をかけた途端、2階をバタバタする音がする。


 寝ていたのか?

 何か別のことでも、やっていたのか?


 「お待たせ致しました。」


 階段を駆け降りて来ようとした、3号が見事に滑る。


 そう言う『お約束』のように、1階までで数回弾み、倒れ伏した。


 「あはは。間の悪さは世界1だよ、終‼️」


 こう言う笑い方を滅多にしない千夏だから、3号のことを実は可愛がっていたのかも知れない。

 笑いながら、回復魔法をかける。


 そして今、倒れた3号……加藤終と言うらしいが、終から絶え間なく抜けていく、目に見えない何かが‼️


 抜いているのは、ほむらである。


 うーん、カオス。


 話は一旦、今日の朝に立ち戻る。


 朝食を食べながら、

 「で?神様のイタズラって何?」と、昨夜中途半端になっていた話題を、ほむらがふった。


 朝食は白米と、私が大量に出している『ご飯の友』だが、味海苔とか、なめ茸の瓶詰めとか、鮭フレークとかいろいろあるのに、何故か納豆を所望された。


 「あー、やっぱ嫌いだぁ‼️苦手‼️でも、懐かしい‼️」とか、喚いている。


 いや、どうゆう懐かしみ方だよ⁉️

 Mか⁉️


 まあ、納豆は私と世奈は苦手だが、千夏は好きみたいだからね。

 3つ1セットを出しただけだが、残りは千夏が抱え込んだ。

 よしよし。


 「あー、じゃあ、まずはほむらのスキルから、ね。」


 ほむらの、私が鑑定してみないと見えない消えかけのスキルは、『ラッキードレイン』。

 他者の『運』を集める能力だ。


 「ただ、私の『万物鑑定』みたいな条件無しの能力じゃ無いみたいなんだよね……」


 だから、私達を初めとする他の勇者からは吸えないっぽい。


 「ほむら、この世界の普通の人には、ほぼ会ってないでしょ?」

 「あー、はい。召喚の時以来?かな?」

 「ほむらのスキル、そう言う一般の人から溢れる運を集めて、自分や仲間に使うもんだから……」


 つまり、ほとんど使ってない。


 使わなければ、『2年で消える』って注釈が付いてたよ⁉️


 「有給かよ?」

 

 小さく突っ込む千夏。


 社会人経験者の高度?な突っ込み。

 ペーパーナースには実感が沸かないな。


 そんなわけで、翌日は市場までの道を、のんびり、混んでいる店でランチまでして歩いてきたのだ。


 お陰で、ほむら自身もステータスを確認することで、スキルが見えるようになってきた。

 うっすいけど。


 「これ、普通の人から集めるんでしょ。ダイジョブなの、運を吸われた人?」

 「あー、漏れでるものを吸うだけだし、大丈夫でしょ。

 だから、会った人の数が重要。」


 引きこもりの敵みたいなスキルだな。

 だから、『神様のイタズラ』だ。


 で、3号勇者、加藤終の店を訪ね……


 今、ここ‼️だ。


 終から『運』を吸い続けるほむら。


 って、3号って普通の『勇者』でしょ⁉️

 なんで、マイナスのほむらに格下認定されてんの⁉️


 意味が分からない。

 なんなの、この人。


 「で?これ、運を吸われてるの?」


 笑い過ぎて泣きながら、千夏が言った。


 「あー、魔力感知使うと見えるけど、運をガッツリ吸われてるね。

 あー?止まった。」

 「アタシのスキルも実線になった。」

 「あはは。」


 「まあ、究極運の悪い人だから、ね。」

 千夏がまとめる。


 そう言えば、トイレに入った途端、トイレットペーパー持って召喚されるような人だったわ、3号。



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