第56話 マイナス×マイナス=プラス と言うやつか?
俺は基本運が悪い。
大事なところで熱を出し、ここぞの場面ですっ転ぶ。
分かっている。分かっているから……
常に気を張っているのだ。
なのに、今回はやってしまった。
来客に慌てて階段落ち。
懲りろよ‼️俺‼️
派手に転げ落ちたけれど、幸い骨は折れていない。
あちこち、強か打ったけれど。
回復魔法は初級なら使える。
自分を『ヒール』しようとし、しかし、
「あはは。間の悪さは世界1だよ、終‼️」
懐かしい声と共に、懐かしい魔力が注がれる。
え?
まさか⁉️
「千……さ……⁉️」
勢い良く名前を呼んだはずが、呼べない。
はね起きたはずが、起きられない。
え?
どうなってる?
千夏さんがかけてくれたヒールで、一瞬で痛みは消えた。
なのに、全身がダルくて動けない。
息を吸うのも厳しい。
何かされてるのか、俺?
「あー?止まった。」
「アタシのスキルも実線になった。」
千夏さんじゃない、別の誰かの声の後、急に体が元に戻った。
驚いて顔を上げると、懐かしい初代勇者と、それ以外に2人いる。
「終って、『勇者』なのに運が無さ過ぎるとは思ってたけど、際限なく吹き出してたみたいだね‼️」
千夏さんはゲラゲラ笑った。
いや、なんなの?
……
「なるほど。結界が出来て勇者の役割が薄れた今、希望者は返そうと。」
笑いの衝動から落ち着いて、千夏さんが説明してくれた。
落ち着くために紅茶を入れて、お出しした。
この国の『紅茶』のレベルはかなり高い。
勇者4号(元農家)絡んでいるからね。
「そう。たぶん終に帰る気はないと思ってたけど、情報収集と報告も兼ねてね。」
「情報収集って言っても、俺はあまり……」
「うん。だと思った。」
「え?じゃあ?」
「知らないのも悪いと思ってさ。」
俺には、戻るつもりがない。
戻る家もコミュニティも無い、元の世界に戻る意味が無い。
だから、『戻り方』とか『代償』とか、今知ったことの方が多かった。
真面目に話す俺達の横で、
「この紅茶、うまくない?」
「うまいな。甘い物が合いそう。」
「もしかして、出す?」
「そうだな。んじゃ、今回は‼️」
騒いでいる、千夏さんの連れの2人。
瞬間‼️
「うわっ⁉️」
「ああ、確かに合いそう。」
目の前に、ホールでベイクドチーズケーキが現れる。
「終‼️皿とナイフ‼️」
「あ、はい。」
取り敢えず、食べながら聞いた。
「この2人は17号勇者と、30号勇者ね。実は2人ともマイナス勇者で、」
「え?マジですか⁉️」
「マジ、マジ。
だから、さっきあんたが食らったラッキードレインみたいな、変わった力を持っている。
これは、30号の食料召喚。」
なんか……
濃いキャラ、出てきた……
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