第14話 女3人寄れば姦しい
2日後、約束通り王宮に現れた千夏だった。
「千夏、城下ってどんな場所?」
「いちご……あんたが外に出てないって、意外なんだけど?」
「まあ、この話し合いの後のお楽しみにとっておいたんだよ。王宮だけでもそこそこ広いし。」
「なるほど。」
「で?」
「この王宮の周りには、いわゆる城下町が広がってて、商店があったり住宅があったり、まあ、イメージ通りだよ。」
「ふーん。でも千夏は面倒臭がりなイメージなんだけど?」
「……失礼だけど、合ってる。」
「ここにいれば全自動で飯も出てくるし、なんで?」
「なんでって……」
珍しい、困り顔の千夏だ。
実は分かっている。
彼女が王宮を歩くだけで、
「勇者様。」
「いつも守って下さりありがとうございます。」
「ありがとうございます」と、ひっきりなしに声がかかる。
「いや、今は18号の結界のお陰で……」
ボソボソ言う声は感謝に消される。
小さな体をさらに小さくする。
「……10年前は派手にやったみたいだね、千夏。」
「うるさい‼あれは八つ当たり‼」
八つ当たりでも、国民から感謝されるレベルで、彼女は魔物を狩ったのだろう。
感謝され過ぎて、王宮にはいられない。
シャイか‼
ともあれ2人で、29号の部屋を訪ねた。
「改めて、私は大崎いちご、26歳。」
「うちは坂谷です。坂谷世奈、16です。」
勇者29号、名前が付いた。
で、世奈ちゃんね。
16歳。若っ‼
「幸田千夏、36。」
諦めたように初代が名乗り、ここにちょうど10歳差の勇者トリオが爆誕した。
私達は、現状を世奈に説明する。
少女の腕の中で、ちび息子はふにゃふにゃ眠っている。
「で、召喚されたものの結界が出来て、勇者そのものがいらなくなったわけさ。」
「はあ。」
「で、帰り道を探すことになった。」
今1つ熱意のない返事に、
「帰りたくないの、世奈は?」と、聞いてみる。
「うーん。正直どうでもいいって言うか、戻ってもいいこと無さそうだし。勝斗にも捨てられたし。」
勝斗ってのは、ちび息子の父親か?
うわーい、闇が出てきた。
「そう言う、女を孕ませて逃げるような馬鹿は、戻ったら速攻去勢してやるから大丈夫だ。」
いやいや、なんで千夏までキレてるのさ?
怖いよ、姉さん。
話を逸らした。
「でも、帰り道探すって、具体的にはどうする?」
「ん……」
「まあ、召喚の間を調べるのは勿論だけど、他の勇者にも会った方がいいと思う。」
「他の?」
「うん。皆帰りたくて、多かれ少なかれ努力している。何が駄目だったのか、何に希望があるのか?聞いてみるのもいいと思う。」
取り敢えずは城を出て、歴代召喚勇者に出会う旅をしよう。
当面の目標が決まった時、
「あのぅ」と、世奈が手を上げる。
「何?」
「医療関係者のお2人に、聞きたいことがあって……」
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