第15話 食料召喚、始めました
「なんか、あんまり出てない気がするんですよね」と、世奈が自分の胸に触れる。
出てないって?
……あ、乳か。
え?
生んで数日で出てないって、まずくないか?
「初日は少しは張ったような気がしたんだけど、そのあとは、なんだか……」
全てが初体験、少女は首を傾げ、
「初日は張ったってことは、初乳はいけたかな?でも、……うーん……」と、考え込む私。
女の人は、大抵子供を産めばおっぱいが出るようになるが……
「まだ未成熟ってことだね、16だし」と、千夏がため息をついた。
この世界には粉ミルクも、子供用液体ミルクもない。
こういう場合歴史上なら?
「貰い乳をするか、ヤギなんかのアニマルミルクか、だね。」
「お米のとぎ汁とか、ばあちゃんに聞いたことがあるよ。」
「ふっるいな、いちご。って言うか、この世界、米無いし。
あとは、緊急避難的には砂糖水か。」
「それで育てるわけにもいかないしな。」
うーんと3人で考え込んで、思い出す。
私、謎スキル、『食料召喚』って持ってなかったっけ?
心の中で『ステータス』を唱えると……
あったあった、『食料召喚』。
これ、語感的には食えるもんなら何でも行ける気がする。
頭の中で『食料召喚』をしてみる。
看護大学時代、授業で見た液体ミルク。
パウチに入ってて、確かあれは1箱20パック入りだった。
粉より使いやすいよな、と思っていると、
『個数を1から100で指定して下さい』と、頭の中で響いた。
は?
1とか小さいこと言ってんじゃないよ。
100だ、100‼
『座標を指定して下さい。』
んなの、目の前のスペースでいい。
瞬間‼
「うわっ‼」
「ふえ?」
可愛い声出たな、世奈。
3人で囲んでいたテーブルの上に、ドンと液体ミルクが召喚された。
20パック×5で100個のつもりが、20パック×100出てきたよ。
「え?これまさか、いちごが?」
「うん、スキル『食料召喚』。」
「うわっ、さすがオーク……」
おい、千夏。
最後まで言えし。
私がオークみたいだ。
「あー、世奈。なんか、いちごが魔法?みたいなので出してくれたし、貰いな、ちびに。」
「え?その……いいんですか?」
「うん。これ、私らじゃ飲めない……って言うか、飲みたくない。」
「あ……ありがとうございます。」
うん、いい笑顔だね、16歳。
「って、なんって量出すのよ、あんたは。」
「いいじゃんか。全員アイテムボックス持ちだし。」
その後世奈はアイテムボックスの使い方を習い、20パック×99を仕舞う。
残した1セットを抱き締めながら、
「良かったぁ」と、ホッとしたのだろう、改めて泣き笑いの顔になる。
なんだろう?
テレた。
「よし、こうなったらお米のとぎ汁も‼」
「えっ‼」
「うわっ‼」
ブランド米ニコマル10キロ×100、召喚されたよ。
「あんた、馬鹿なの?」
「いいじゃんか、千夏‼全員アイテムボックス持ちだぞ‼
日本人なら、米だ、米‼1人33個ずつ保管して、残り1個は食うぞ、今から‼」
なかなか王宮から出られない。
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