第127話 運は0でも100でも動けない

 雨月によると、

 「召喚されていないことはあり得ない。」

 らしい。


 勇者召喚の理屈から考えるに……


 魔力でごり押しして、饅頭に世界の壁を越えさせたら……


 腐った。

 マイナスの効果が出たのだ。


 等価交換での時計と饅頭の入れ替えは……


 千年饅頭と呪いの時計を生んだ。

 プラスの効果が現れたのだ。


 なら、不平等な入れ替えなら?


 入れ替えは必ず行われ、代償が足りない分はプラスの効果を出さないとか、むしろマイナスの効果を与えることでバランスをとるはずだ。


 「たぶん16.5号は召喚されていると思う。」


 いや、『点5』呼びは勘弁してあげて欲しい。  


 足りなかった10人分の魔力の分、加護は与えられず、安定しない召喚だから、王宮の『召喚の間』以外に落ちた。


 「規定の魔力量の9割だったら、どの程度のペナルティが課されるか?

 データが欲しい。」


 雨月の依頼で、翌日からいちごと2人、16.5(←結局💦)号探しと相成るのだ。


 ただ、さすがに当てずっぽうはきりがないから……


 「まずは終のところ行こうか?」

 「ああ、3号は宅配や引っ越しで、国中走り回ってるからな。」

 「うん。まあ、謎の召喚者らしき人を見かけたら、さすがに報告してくれると思うけど、念のために、ね。」

 「わかった。」


 「終ならトイレだよ。」


 訪ねたら、半笑いでほむらが出てきた。


 いや、つくづくトイレに縁がある男だな、終は。


 まあ、勇者ホンで予告すれば良かっただけで、わたし達も悪い。


 電話のない生活が長過ぎて、そう言う使い方を忘れているのだ。


 ほむらは最近、終の仕事を手伝っている。


 ……

 いや、まあいいけど。


 終はいい子だし。


 ただ、必ずアルスハイドに残る人間を好きになるのは、難しい選択だと思うのだが……


 ああ。

 でも、ほむらも実はしっかりしているし、わかっていても……

 なら、成り行きに任せるしかないか。


 「うーん。俺達が知らない、召喚者かぁ。」


 話を聞いた、終が渋い顔をした。


 「それは、俺じゃわからないよ。」


 まあ、そうか。


 終は、基本宅配業をしてきた。

 結界が出来てからは、遠い町への引っ越し業だ。


 「辺境でそう言う噂は聞いていない。

 でも、近い場所はほぼ知らないし、探すなら近場からじゃないかな?」

 「なるほど。」


 「あ‼️

 なら、あたしのラッキーレイン使わない⁉️

 運をカンストさせてから探せば、一発で見つかるでしょ⁉️」


 ほむらの提案に……

 素直に乗れないわたし達。


 「う……あれは……」

 「水戸黄門みたいななるからなぁ……」


 『どうしようもなければ明日頼む』と伝えると、ほむらは不満そうだったが……


 運がカンストしてると、他人からは『神々しく』見えるらしい。


 めちゃくちゃ拝まれるから、嫌だよ‼️

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