第43話 ほむらさん、大混乱

 ドキドキしながら、夕食に手を付ける。


 青魚、嫌いだったよね、アタシ?

 やっこ豆腐とかも、添え物くらいの気分で、さぁ?

 ずっとパセリ並みに扱っていたのに?


 しかし、やっぱ1年半ぶりの和食は美味しかった。

 「うっわぁ」と、変な声が出る。


 さらに朗報。

 なんと『箸』までついていた。

 箸は日本の既製品じゃなく、こちらで木を削って作った感じだが、箸は箸だ。

 うん、完全に他の召喚勇者、絡んでる。


 でも、うまい。

 味噌汁、キャベツだ‼

 これ、好きだった‼

 

 勿体なくて、多過ぎる気がした2尾目のサンマを、アイテムボックスに入れようかと思ったが、勢いで手を付けてしまったので一気に食べた。


 旨い、旨いよう……


 一体世界に何が起こった?


 いや、夕食ごときで心配される世界とは?


 そう言えば、召喚直後大混乱し、何も知らない体のアタシだが、ステータスのことは知っている。

 一応説明を聞いていたので、1人になった時試してみた。


 ステータスが見れたので、もちろんアイテムボックスも知っている。

 散々試した。

 1度家の中の家具が全部消えた。

 実験上等。


 そう言えば、お互い普通に会話できたし、ステータスには出ていない『言語理解』も絶対あるよな。


 ちなみに、すでに暗くなっている外に反し、家の中を照らしている明かりは『光魔法』だ。

 この世界にあるのはランプだが、使い勝手が悪いのですぐに魔法に切り替わった。


 自分のステータスを確認し、

 『特訓しなくちゃ』と思ったのがきっかけだった。


 アタシは『勇者マイナス』だった。


 マイナス、プラスはわかっている。

 イメージ通りでいいのだろう。

 

 最初から、おそらく他の勇者より弱っちいアタシ。

 え?やばくない、これ?

 

 交流がないから他との比較は出来なかったが、魔法だって『ステータス』と『アイテムボックス』の勇者仕様と、誰でも使える『生活魔法』以外、『光魔法』と『風魔法』しかない。


 いや、実際2つが多いのか少ないのか分からないけど。


 でも、『勇者マイナス』だし。


 『特訓せねば』と思ったものの、どうすればいいかわからない。

 とにかく使うことと考えて、家の電気は全て魔法にする。

 ランプは使わず部屋を照らし、出力調整を試した結果眩しくて2日程眠れなくなったりして、以後は制御を心掛ける。


 使うこと、イコール上達と信じたい。


 風も同じく、たまには乾燥機を使わず全ての洗濯物を『風』で乾かしてみた。


 この使い方で本当にいいのか?


 いろいろと分からないまま夕食を済ませ、翌朝出てきた食事が今まで通り、パンとスープとミニオムレツだったことに思いのほかガッカリした。


 ご飯と海苔と、納豆くらい期待していた。

 いや、納豆嫌いだけれど。


 昼食も、夕食も、次の日も、その次の日も今まで通りで。


 数日間我慢したが、結局耐え切れなくなった。


 あたしはこの世界にきて初めて、自分から彼らの接触する。


 「あの?」

 「はい?」


 朝食を運んできた料理人に声をかけた。


 「何日か前、この国の料理じゃない、アタシの国の料理が出て、あれは一体?」

 「ああ、あれは新しい勇者の方が、多分食べたいだろうからって提供してくれたんですよ。」


 いや、確かに食べたかったよ、自分で思っている以上に。

 でも、なら毎日くれよ‼

 意地悪か‼

 

 謎のご同僚の好意、または意地悪に打ち震える耳に、

 「うわーっ‼」

 「きゃぁーっ‼」と、叫び声が聞こえ出す。


 「上空にドラゴンがぁ‼」


 って、もう、異世界、嫌だぁ‼

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