第118話 お仕置きの時間だべぇ

 ……


 言葉が出ない。


 ありきたりにしか言えなくて、

 「なんなの、これ?」

 と、いちごに聞いた。


 「『食料召喚』を、攻撃魔法にしてみた件‼️」だってさ。


 「JAの倉庫か、ここは……」


 力の呟きが全てを語る。


 宿屋のサブの寝室、えらいことになっていた。


 ビッシリ米俵。


 下で16号が押さえ込まれている。


 確かに……

 『食料召喚』、武力になってる……

 主に『重量』が。


 「あー‼️あんたまた、100俵召喚したんじゃ無いでしょうね⁉️」

 「いやいや、まさか。

 ……って言うか、

 『それだと床が抜けます』って、頭の中の声に突っ込み食らった。」


 よく分からないけど、ナビゲーションシステム、ナイス👍


 「あれって、何キロくらいあるのかなぁ?」


 農業に明るくない終が呟く。


 「んー?知らない。

 ……ん?待て、待て。今鑑定を……

 あー、60キロだって。」


 16号の上には、60キロ×20くらい乗っている。

 

 何せ目標物(16号)が小さいからさ。

 20俵くらいが精々だ。

 

 それ以外はキレイに床に積み上げられて……


 50俵くらいはあるね。

 アホか、いちご。


 「農家って、今も俵、使ってるの?」

 「いや。デカイ茶色い袋。」

 「あー、そうなんだ。俵しかイメージ無かったから。

 重要なのは重さだから、業務用ってことで召喚したんだ。」

 「なるほど。」

 「重い食料って限定すると、米以外浮かばなかったよ。」

 「あー。」

 「って、あんたは米至上主義なだけじゃない‼️」

 「バレたか。」


 「なあ、それよりさぁ⁉️えーっと、30号だったか?」

 急に真面目モードになる力。


 「大崎いちご。」

 「あー、じゃ、大崎。

 お前、食料なら何でも召喚出来るのか⁉️」

 「まあ、私が食料だと思えれば……」

 「?」

 「歯切れ悪いなぁ。」


 「ああ。」

 思い出した。


 いちごと前に実験したわ。


 「この人、蛙の肉とかも召喚出来たのよ。」

 「はっ⁉️」

 「マジで⁉️」

 「そう。いわゆるゲテモノもオーケーなのに、パクチーだけは無理だった。」

 「あれは食いもんじゃねぇ。」

 「うえっ⁉️マジで⁉️」

 「食いもんだと認めていないもんは無理ってことか。」


 パクチー、哀れ……


 「じゃ、種籾は⁉️」

 「ああ。出したことあるわ。」

 「マジで⁉️」

 「王宮で出した。今実験的に栽培中。」

 「うわっ、馬鹿‼️」

 「誰が馬鹿よ⁉️」

 「大福なんかに任せるな‼️俺にやらせろ‼️」


 「米は米屋だ‼️」


 おい、力。

 餅は餅屋。

 原型がわからなくなるから、止めろ。


 米を作りたい『常勝農家』と、『爆食王』のじゃれ合いを見ていると、

 「お前ら‼️俺を忘れてるんじゃねぇ‼️」

 と、想像よりは男らしい声が響く。


 もっと甲高いかと思った。


 16号が俵の下からわめいている。


 はい、わざとです。


 比較的穏便なお仕置きにしてやったんだから、感謝して欲しい。


 石の代わりに、俵を抱かせて?やった件。

 

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