第130話 ある意味1番異世界生活を楽しんでる人

 俺が厄介になっているラクア村は、王都の西門から2キロ程度の場所にある。


 いや、計らないよ。


 道具もないし、正確な地図もない世界だ。


 歩いて、大体3000歩だった。

 1歩80センチとして、2.4キロ。

 アップダウンがあり、歩きにくい場所もあるから、約2キロ。


 たぶん、遠くはない結論だ。


 この2キロが近いか遠いかは、時と場合で判断が分かれる。


 この国には元来魔物がいた。

 周囲の『魔の森』から入り込み、人を襲った。


 だからだろう。

 たった2キロで、嫁の最初の旦那は死んだのだ。

 はぐれコボルトに食われて死んだ。


 この場合2キロは遠い。

 積極的に行き来出来ないから、王都に近いのに、村は小さく貧しいままだ。


 今は『結界』が出来た。


 おー、ファンタジー‼️


 魔物は一掃され、国中活発に移動出来る。

 商人達も動き出す。


 こうなってくると、2キロは近い、近過ぎる。


 商人達が野営する場としては近過ぎて、商品を仕入れに寄って貰うには、これといった名物も無い。


 村は相変わらず貧しいままだ。


 この国は『パンの国』だ。


 主食はパン。

 村ではなんとか食べていけるだけの小麦と、野菜を作っていた。


 それも十分とは言えないから、各家庭で蕎麦の実を育てて、いざと言う時に備えていた。


 蕎麦は2ヶ月半で出来るし、

 「こっちをメインにすれば?」と、片言なら話せるようになった、辛うじて伝えると、

 「蕎麦は不味い」と首を振る。


 どうやって食べているのか知らないが、食べ方を分かっていないだけと思った。


 蕎麦粉をつくり、怪しい記憶でガレットを作る。


 いや。

 お洒落な店など縁がなかった俺だから、いい加減だ。


 まだ、結界は無かった。


 数日前に、ちょうど若いオークを討伐したところだ。


 ラクア村は国の中心部に近い。

 お陰で群れに襲われることは無く、なんとか俺でも守り切れた。

 

 オークは解体して『食肉』、余った分は『干し肉』、脂はいわゆる『ラード』になる。

 魔石は貯めておいて、いずれ換金。


 このラードを使って蕎麦粉のクレープ(ガレット)を焼き、干し肉に葉野菜、うろ覚えで作った異世界攻略の必殺技、マヨネーズをたっぷりかけた。


 これが嫁と、義理息子(前の旦那の子で13歳だ)に大ウケした。


 村人の中にも試したがる者がいて、気前よく食べさせ信者?を増やした。


 今、村は蕎麦の作付け面積を増やし、食も安定し始めている。


 王都には何回か行ったが、マヨネーズで大儲けとはいかない。

 俺が知っている調味料も料理も大概ある。

 もちろんマヨネーズもあり、けれどガレットは無いようだから……


 ラクア村の名物にしようかと、考えていた。


 結界が出来、生活も安定した。


 そんな頃、2人の女性が村を訪れた。


 「こんにちは。」

 「こんちは。」


 子供達が、俺が冗談で教えた日本語の挨拶をしている。


 それじゃ通じないよ。


 が、

 「はい、こんにちは。」

 「うん、思い切り日本語で言われたよ。

 久し振りだなぁ。」

 と、女性2人も普通に返す。


 子供達にはこの国の言葉に聞こえるらしく、会話が成立しているのに⁉️


 何故だろう?


 俺には2人の言葉、日本語に聞こえるんだが……



 

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