42話 お調子者のラインハルト
終わってみるとあっけないものだった。
商人が囮となって山賊を呼び寄せる。
呼び寄せた山賊の中の救出対象のダーリアを助ける。
あとは馬車の後方を少し離れてついて来ている、ヴァラヴォルフ族の戦士たちが
山賊に向かって矢を放つ。
一連の流れは万事順調に進み、誰一人けが人もだすことなく終わった。
ユライとダーリアと商人は馬車の中。
ラインハルトとゼノビアは馬車の外にいる。
ゼノビアはラインハルトに不満を持っている。
「ラインハルト、はなしが違うよ。
アタシ達は盗賊ギルドのなんとかと言う奴を助けるだけのはずだろう。
その過程で多少牽制したとしても、あんなに殺すことないじゃないか」
「まあまあ、いいじゃないか。
お前が馬車を覗き込んだ山賊をおもわず刺したのと同じだ。
俺も野太刀を振り回してると気分が良くなってきてだな。
おもわず、何人も斬っちまったというわけさ。ガハハハハハ」
「笑い事じゃないよ!!
部下に手柄を立てさせるのも指揮官の努めさ。
たかが4,5人の山賊相手にあんなに大勢の戦士で矢を放って何が楽しいのさ。
あれじゃ、あんたがアタシの部下におこぼれを残したみたいじゃないか!!
『オレ一人で全て片付けられるが、ゼノビアがうるさいので残しといてやる』
そう言ってるようなもんだよ!!」
当初の予定ではラインハルトが牽制してダーリアを救出。
そして、合図とともにヴァラヴォルフの戦士たちが矢を放つ手はずとなっていた。
ゼノビアはそれを部下に指示していたし、それを手柄の1つとするはずだった。
しかし、終わってみれば4,5人の山賊相手に矢を放っただけ。
こんなものは手柄にも何にもならない。
ラインハルトが調子に乗って山賊を血祭りに上げすぎたせいだ。
ラインハルトの指揮官としての自覚の無さと、部下たちへの想いがゼノビアの怒りの原因だ。
要するに、ラインハルトが調子に乗らず、当初の手はず通りに救出と牽制だけしていれば、
誰も損をせずにすんだのだ。
「悪かった悪かった。でてきた山賊があんなに少ないとは思わなかった。
もう少し多いものだと思って、武器も野太刀を選んだが失敗失敗。ハハハハハ」
「なにが失敗だい。まったく、あんな長物の野太刀なんか持ってきちゃってさ。
馬車を出るときに引っ掛けて危うく転びそうになってたのはどこのどいつだい」
「んなっ!!お前アレを見てたのか。それなら胸の内にしまって置いてくれてもいいだろう
みんなの前で言われては俺も恥ずかしいぞ」
「恥をかかせるために言ってるんだよっ!
こうでもしなきゃアンタはわかんないだろう。まったく呆れたやつだね」
プリプリ起こりながらゼノビアは馬車の中に入るとガサゴソと音をたてる。
やがてダーリアをつかみ上げると馬車の外へ投げ捨てた。
慌てるユライを無視してゼノビアは気絶しているダーリアを蹴飛ばして起こすと
山賊の寝蔵へ案内するよう言った。
ラインハルトへの怒りをダーリアへ八つ当たりしていることは、
誰の目から見ても明らかだった。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
次回更新予定日 2019/12/22
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます