41話 罠
「死ねや!死ね死ね!死ねやあ!!」
ラインハルトは大声で叫びながら次々と山賊を斬り伏せていく。
ラインハルトが3人ほどの山賊の頭や腕を飛ばしたところで
ゼノビアが腰から石斧を取り出した。
原始人が使うような、木の棒の柄に石を縄で結んだだけの簡単な石斧だ。
それをブンと音がするほどの勢いで投げた。
勢いよく飛んだ石斧は、ラインハルトの姿に恐怖しながら視線を釘付けにしている、ダーリアの頭に直撃した。
帽子型の兜に直撃した石斧がカーンと気持ちのいい金属音をたてる。
当てられた方のダーリアは気持ちいいはずもなく、悲鳴も上げることもできずにその場に倒れこんだ。
それを見たユライが驚いて声をあげる。
「あねさん!! なにやってんだ!? ありゃダーリアだ。
連れて帰るんだぜ。 なんで地面なんかに転がすんだ!?」
「まあ、見てなって。
まったく、ラインハルトのやつあんな長物なんか振り回しちゃってさ」
呆れるゼノビアをよそに、ラインハルトはなおも野太刀を振り回して前進していく。
地面に倒れてピクリとも動かないダーリアンのところまで来ると、
ラインハルトは素早くダーリアンを担ぎ上げた。
そうすると手に持っていた野太刀を、惜しげもなく山賊の1人に投げつけた。
投げつけらた山賊はかわすのがやっとだった。
しかし、かわしたところをラインハルトに斬りつけられて悲鳴を上げた。
ダーリアンを担いだことで、いかに怪力のラインハルトとはいえ
野太刀を片手で振り回すことはできず、用済みになったので山賊に投げつけたのだ。
かわりに腰にさした刀を抜いて山賊に斬りかかった。
こちらの刀は先程の野太刀に比べれば小ぶりだが、それでも常人が扱う剣に比べれば
50から80cmは刃が長いだろう。
怪力が自慢のボア族では標準サイズだ。
ラインハルトは馬車から山賊の一団の中ほどにいるダーリアンのところまで来て、
いまは山賊の囲いを破って、また馬車に戻ろうとしている。
「まったく、ラインハルトが強いのはわかるけど、こうまで背中がガラ空きなんじゃねえ」
そう言いながらゼノビアは山賊の1人に背後から斬りかかった。
背中を一突きされた山賊は、声をあげることもなく血を吐きながら地面に倒れる。
山賊の何人かが声をあげる。
「おい、こっちのメス狼もくるぞ!!」
「ちくしょう!! なんなんだこいつら」
そうこうしているとラインハルトが山賊の囲いを突破して、
肩にダーリアンを担いで馬車の近くに戻ってきた。
刀にベットリとついた血をはらうために、何度か刀をブンブンと地面に振りながら言う。
「少し山賊の人数が少ないが、当初の手はず通りにいくか?」
「誰が少なくしたと思ってんだい!
あんな長物をブンブン振り回してさぞ気持ちよかっただろうね」
ゼノビアが呆れながら答える。
「ガハハハハ、まあ、そう怒るな。部下に手柄をやろうとするお前の気持ちもわかる。
それ馬車に入れ。商人!!まだ、そこにいたのか。さっさと馬車に入れ!!」
ラインハルトにどやされて商人は慌てて馬車の中に入った。
ゼノビアがそれに続く。
山賊は困惑した。
「なんだ? なんで馬車に戻るんだ?」
「あの猪の方が俺達より強かったのに、なんで引き上げるんだ?」
「かまうもんか!! 馬車に戻るなら好都合だ。外から刺すなり火をかけるなりしろ!!」
戸惑う山賊たちを尻目に馬車の外に最後まで残っていたラインハルトが、
ダーリアを馬車の中に投げ入れた。
そして腰に着けている袋から角笛を取り出すと高らかに吹き上げる。
ラインハルトの吹く角笛の音は大きく、山賊たちはおもわず耳を塞いだ。
すると、馬車が先程まで走ってきた道から同じ様に角笛の音が聞こえる。
山賊たちが驚いて振り返る。
その間にラインハルトは素早く馬車の中に飛び込んだ。
馬車の後方50mくらいのところ、道の両側の森からヴァラヴォルフ族の戦士たちがでてきた。
ヴァラヴォルフ族の戦士たちは森から出ると、素早く弓を構えて矢をつがえた。
山賊達が全てを悟った時には遅かった。
「逃げろ!!矢がくるぞ!!」
「罠だ!!逃げろ」
山賊たちは口々に叫びながら馬車の方へ走った。
しかし、全てが遅い。
逃げる山賊達の背中に次々と矢が刺さり、そこかしこで悲鳴があげる。
ヴァラヴォルフ族の戦士たちが角笛をもう一度吹いて、
攻撃終了の合図をだしたときには、山賊たちの背には5本も10本も矢が刺さり絶命していた。
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次回更新予定日 2019/12/21
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