47話 帰路

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ラインハルトとゼノビア率いる山賊討伐隊は、

無事にその任を終えて義清達がいる村への帰路についた。


鬱蒼とした森にある丘を一行は下っている。


誘拐された娘たちは馬車へと乗せられている。

その馬車の後ろに山賊たちが一列に縄で繋がれている。

山賊の列の最後尾には親分がいた。

内股で歩きズボンの後ろが血まみれなのは因果応報の証だ。



ラインハルトとゼノビアはそれぞれの種族の騎乗種である、アセナとラハブに乗っている。


討伐隊の前方にはやや離れてアセナに乗るヴァラヴォルフ族の見張りが、二騎先行している。

その内の一騎が討伐隊の方へ足早に引き返して来ると、

ゼノビアとラインハルトに斥候が戻って来るようだと報告した。

斥候ほどではないが本隊より先行する者は耳や鼻が他の者に比べていいものを当てる。

それで報告にきたものは斥候の気配を感じ取ったのだ。



二人は顔を見合わせた。

斥候は通常は定時報告を除いて、何かあったときしか本隊に接触しない。

小さいことであれば、この先の道が険しいこと、近道を見つけたなどだ。

大きなことであれば、敵との接触、罠の発見などである。

なんであれ斥候が戻ってくるのは尋常なことではない。


やがて斥候のヴァラヴォルフの戦士が前方からアセナに乗って走ってきた。

ゼノビアが斥候に聞く




「どうしたんだい。 何かあったのかい?」


「村に何者かの一団が接近中です」


「なんだど!?」




ラインハルトが驚きの声を上げた。


斥候はいまは森が鬱蒼としているが、少し行くと森が薄くなる場所があるという。

そこから、道を外れるが少し斜面を降りると村が見えるそうだ。

そこにも1人斥候がおり枝葉を取って見通しを確保しているらしい。


ラインハルトとゼノビアは数名の護衛だけを連れて急いでその場所に向かった。



道を進むと確かに森が薄くなってくるが、とはいえ丘の下を見通せる程ではない。

やがて斥候が道を外れて斜面を下ると目的の場所に到着した。

その場所は人の頭より少し高い程しか木々がない。

それが斜面に生えているので枝葉を落とせば、森に窓ができたかのように、

ポッカリと緑の絨毯に穴が空いたようになる。

深い森でこの様な場所を探すのは簡単なことでない。

ゼノビアの斥候は村へと進む一団の発見と同時に、この場所の選定も行っていたのだ。

練度の高さが伺える働きといえる。



ゼノビアとラインハルトがそこから村を見下ろす。

二人は腰の袋から単眼鏡を取り出した。



村へと続く森の中の一本道を進む一団が見えた。

2列縦隊で進んでいる。

先頭を行く兵の後ろに大きな旗を掲げた兵が2人。

旗はニ旗あり、1つが赤地に、天使の様な白い羽根を広げた翼が描かれている。

もう1つが黒地に王冠を着けた蛇が3匹絡まり合っている。

その後ろに馬に乗った者が5人。おそらく一団でも高い地位を占める者たちだろう。

その後ろ徒歩の兵隊が従っている。

徒歩の兵隊の先頭に立派な白い鎧の騎士が5人ほどいる。

その後ろに兵隊が続き、最後尾に黒い鎧を着た騎士が5人ほどいた。

残りは急所を金属の鎧でおおい、他は革鎧の兵隊だ。


総勢40人ほどの戦闘集団が村へと向かっている。


ゼノビアが言ってラインハルトが答える。




「偉く立派な身なりのヤツが多いじゃないか」


「馬に乗る奴らのことか。後ろの二人が指揮官クラスだろうが、

 前を行く3人はなんだ? 聖職者か?」


「ローブに赤地に白の模様。神官や聖職者っぽいね」


「最後尾の雑兵に混じった黒色の鎧の騎士。アレには油断できんぞ」


「最後尾を行くだけあって無駄がないね。

 後方への警戒、足の運び方にいつでも主のもとへ駆け出せるようにしてる工夫があるよ」


「徒武者の先頭をいく白鎧の騎士とは対象的だ。アレは囮かなにかだろう。

 目立つ白い鎧のくせにただ歩いているだけだ。警戒も何もできてない」


「村では一団の接近に気づいているみたいだよ。さすが義清様だ、なにか策があるみたいだね」




村ではスケルトンとボア族、ヴァラヴォルフ族の本隊が

山賊討伐隊の帰りを待っているはずだった。



しかし、一団の接近に村からだした周囲警戒用の斥候が気づいたのだろう、

朝に村を出発したときとは様変わりしている。


広場のテント群が撤去されている。

スケルトンは広場を抜けて森へと入っていく。

それにボア族も続いているが、どうしたわけか森に入る部隊とは別に村に入っていく部隊もいる。

ヴァラヴォルフ族もスケルトンとボア族に続いて森に入るべく広場で待機している。

しかし、こちらも森に入る部隊とは別に、村に接近中の一団が通る一本道の脇の森へと入る部隊がある。


それぞれの部隊から伝令が出ては広場の中央へと向かい、また部隊に戻っていく。

広場の中央には義清とエカテリーナとベアトリスとラインハルトの副官がいる。

他にも数人のボア族がおり、その数人と副官を交えて何事か話している。

指示はエカテリーナに伝えてあるらしく、

伝令は指示をもらうとそれぞれの隊に帰っていく。



ラインハルトが口を開いた。




「部隊の移動からみて、

 奇襲かあの一団を誘い込んで何かしらやるおつもりなのかな」


「そうみたいだね。

 旗や指物、小旗も全部下ろして動いてるみたいだし、隠れて動きたい意図があるみいだよ」


「くそ!! とんだ事になった。

 残してきた本隊の数が多いとはいえ、実戦部隊の指揮者が二人も不在というときに」


「こうなったら、一刻も早く村へと急ぐしかないね」



言うが早いかゼノビアは斜面を登り始めた。

ラインハルトもその後に続く。

するとゼノビアがラインハルトの方を振り返った。




「足手まといは切り捨てるよ。異論はあるかい?」


「あるわけがないだろう。連れて行く人数が多いのだ。多少間引いても構わん」





ゼノビアとラインハルトが斜面を登ると、既に山賊討伐隊が道で待機していた。

おそらくゼノビアの副官が命じて部隊の行軍速度を上げさせたのだろう。



ゼノビアが部隊に村に何者かのいち団が接近中であることを告げる。

部隊に動揺がはしったが、ゼノビアが落ち着かせてすぐに続けて指示をだす。

部隊を二つに分けるという。

一隊はゼノビアとラインハルトが率いて行軍速度をあげて村へと急ぐ。

もう一隊は誘拐された娘たちと捕虜となった山賊たちを管理しながら進む。

行軍速度が遅くなりがちな後者を部隊から切り離したのだ。



更にゼノビアは言う。




「行軍速度をあげるのは早足までだよ。

 みんな駆け足で進んで村に着いたときにはバテ上がってましたじゃ話にならないからね」


続いてゼノビアは山賊達の方を見て言った。


「山賊共が少しでも逃げようとしたら殺せ。

 こいつらが少ないほど行軍速度はあがる。

 いいね、『疑わしきは殺せ』だよ。

 少しでも怪しいと思ったら殺して数を減らしな。特に後ろの……」


ゼノビアがアゴで山賊の親分を指した。


「そこの小悪党!! お前は今まで見てても一番足が遅い。

 ケツをかき回されてようが刺されていようが、この際関係ないんだ。

 行軍に付いてこれないようなら死んでもらうよ」





山賊の親分はこの言葉に震え上がった。

親分は村の娘に復讐として火かき棒で散々にケツを突かれて、出血までしている。

そんな状態で村まで速度を上げる行軍に付いていかなければならないのだ。

速度が遅ければ殺される。

親分はケツが傷つくのを覚悟で歩くしかないと心を決めた。



ユライとダーリアは山賊達の見張りを買ってでて後ろの部隊と行くことになった。


山賊討伐隊は素早く二つに部隊が分かれると足早に村を目指した。


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次回更新予定


2020/1/11

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