48話 兄の苦労

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投稿したつもりが、できてませんでした。

今日明日と続けて投稿しようと思います。

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「いいですか兄上、義とは何を置いても優先すべき事柄なのです。

 でありますから、それが試されるのが決闘なのです。王都ではこれが……」




ダミアンの話にウルフシュタットはうんざりしていた。




(この人は、王都で何を学んできたのか。

 自分の故郷でも西方の戦地でもその手の話がいかに胡散臭いか、

 いやというほど私は知っているというのに)



せめて前をいく神官がもう少し話が楽し人ならよかったと、前をいく神官ボドワンへと視線とやった。



ウルフシュタット一行は東方最辺境の村へと歩みを進めている。


魔術師がいうにはそこに置いてあった仕掛けに何やら不備が生じたのだそうだ。

ウルフシュタットにとってはどうでもいいことだったが、

撤退作業から開放されたこともあって気分転換に村まで行ってみようと思った。


一行はゼノビアとラインハルトが気にしている、村へと向かう一団だ




(いや、爺さまの苦労を思えば、これほどでボヤいては申し訳がたちませんね)




そう思ってウルフシュタットは首を振った。



ダミアンそしてウルフシュタットの祖父であるヴォルクス・ローゼンは、

ラビンス王国でも数少ないデゴルイス三世、四世、そして現国王である五世と

国王三代に使える人物である。


無論デゴルイス三世のときのローゼンは子供に過ぎなかったが、その才を見込んだ国王が王都に呼び寄せて王宮の学勉所で教育を行うことを許している。

ローゼンはその期待に答えたと言っていいいだろう。


彼は成人後、自分の領地に帰ると王国でも最も統治の難しい地域の1つといわれた、

その領地を見事にまとめあげた。

ローゼンの領地とその周辺は軍閥が多く、古くから独立意識が強い。

それを彼は一代でまとめあげて領地の拡大まで行っている。


もっとも、この領地拡大はデゴルイス四世が没し、

デゴルイス五世が即位するまでの間に行われている。

つまり国王交代のどさくさに紛れて私的に戦をして周辺領土を切り取ったのだ。

後にこのことは王宮からの糾弾を受けるが、

ローゼンが西方戦地で目覚ましい活躍をみせたことで不問となっている。


今度の東方大遠征でも最高指揮官はローゼンが担っている。

齢60を超える老人だがその覇気は衰えておらず、

その領地の大きさと軍事力は王国内でも屈指の強さを誇っている。

何より彼は王国と王個人への忠誠を誓うことを自分の人生の至上の事としていた。



そんな祖父にウルフシュタットは病弱ではあったが付き従がってきた。

西方の戦地でも祖父の指揮のもと戦ったし、独立意識が強い故郷でも祖父の人心掌握術には舌を巻いた。

最初は父親が事故で数年間、戦陣に立てない状態になったときに臨時として

幼いながら軍役に付いたが、あとから考えればウルフシュタットの性に合っていたのだろう。



そんなウルフシュタットだからこそ弟ダミアンのいう『義』などというものが

非常にあやふやで胡散臭いものだということを知っている。

祖父ヴォルクス・ローゼンが、孫たちの多くは戦場で生を受けたように育ってしまった。

せめてダミアンだけはと、ダミアンを勉学に励ませるべく王都へと送ったのだ。





(なのにこのお人は……。爺さまの苦労がわかっているのか)




いまだに『義』について小難しい講釈を垂れているダミアンにウルフシュタットは嫌気がさしてきた。





「その決闘とは二人だけで行うのでしょう?」


ウルフシュタットが聞くとダミアンは胸を張って答えた。


「そうですとも、二人だけで行う神聖なものです」


「日時も場所もあらかじめ決めてあって、立会人もなし?」


「そうです。二人の義を試す神聖なものです。余人は交えません」


「ふん、そうですか。ならばその決闘とやらは、毎回勝てますね」


「なぜそう言いきれるのですか兄上!?」


「毎回場所も時間もあらかじめ決めておくなら、

 先にそこに屈強な兵を5人ほど隠しておけばいい。

 そうすれば相手は1人で、他に見ている者もいない。袋叩きにして勝てばいいのです」


「なにを言われます兄上!!わかっておられないのですか!!

 それでは神聖な義を交えた決闘が……」


「わかっていないのはあなたの方です!!

 生き残ること、勝つことが何よりも大事なのですよ!!

 手段などどうでもいい。

 卑怯だ何だと言われようが、生き残った者のみが明日を生きられる。

 明日を生きられるということは、

 自分を卑怯と罵った相手を殺すこともできるのです。

 死んだものは英雄と讃えられても、一生墓穴からでてくることはありません。

 いいですか、『生き残ること』これが何よりも大事なのです。

 なぜ、それがわからないのですか!!」


「私はそうは思いません。たとえ死んでも騎士の名誉は……」


「そんなものは何の約にも立ちません!! あなたは戦場に立ったことがないから……」


「お二人とも、そう声を荒ぶらせますな」




ウルフシュタットとダミアンが馬上で言い争っていると、

同じく馬で前をいく神官マグダミアが声をかけてきた。




その言葉にダミアンは申し訳ありませんと、うやうやしく頭を下げた。



ウルフシュタットはこのファナシム聖光国から派遣されてきた神官マグダミアも気に入らない。

自分とそれほど歳がかわらず、20代であろうマグダミアは長い黒髪をなびかせている。

鼻眼鏡と呼ばれる耳当てがなく、鼻を挟むことで掛けるタイプの眼鏡をしていた。


近頃ラビンス王国でも王宮をはじめ、いたる所でファナシム聖光国の影がちらつく。

特に王宮では、時に内政干渉ギリギリの話し合いが持たれているという噂さえある。

ウルフシュタットはこの神官マグダミアもその類ではないかと警戒しているのだ。



神官マグダミアが前を向く、するとマグダミアの横に控える侍従神官が

ウルフシュタットに馬を寄せてきた。




「あまり、神官様のお手を煩わせないように」




そういうと侍従神官は、またマグダミアの横に馬を進ませていった。


この言葉にウルフシュタットははらわたが煮えくり返りそうになった。




(頼んでもいないのに、そちらが勝手に付いてきたのではないですかっ!)




元々この東方大遠征の本隊は総指揮官ヴォルクス・ローゼンの指揮の元、

既に撤退済みである。


しかし、民をこの東方の地に残している以上、その警戒と統治にあてる兵を

選抜して残さなければならず、その任にウルフシュタットが当たっていたのだ。


その作業も一定の目処がつき、本国への帰還も間近という仕事が一段落したとき。

そうしたときに、件の村の様子がおかしいと魔術師から報告を受けて

気軍転換がてら行ってみようとウルフシュタットは思ったのだ。


それに自分も行きたいと言ったのはダミアンであり、

そのダミアンが、王都でお世話になり東方に布教活動に来ている神官マグダミアも連れていきたいと言い出したのだ。


神官マグダミアは敬虔な信徒の様な様子だが、横に控える侍従神官は態度が大きい。

権力を傘に来て好き勝手やっている様に見える。




(たかが神官が、それも侍従の分際で何様のつもりですか)


ウルフシュタットは怒り心頭だが、それを抑える。


(いけない、いけない。無理をして、また倒れでもしたら大事になってしまうかもしれません)




ウルフシュタットはその名前に反して病弱で知られている。

身長は高いが、祖父譲りの白髪で長髪、肉付きもいい方ではなく細身だ。

特徴的なのは笑っているかのように細い目だ。

何かと寝込むことが多く、なにもない日でも、日に三度はベットに入って体を休めることもある。




(この人たちといると体が蝕まれていくようですね)




ウルフシュタットは大きくため息をついた。



そうこうしいると、件の村が見えてきた。




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