49話 侍従神官の愚行

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最初に異変に気づいたのは先頭をいく兵士だった。


すぐさまウルフシュタットに報告する。




「村の前にモンスターがいる!?」


「遠くてはっきりとはしませんが、体格が人ではありません。3匹ほどおります」


「村の様子は?荒らされていますか?」


「外からは何とも言えません。

 ただ煙も上がっておらず、門も柵も壊れている様子はありません」




ウルフシュタットは迷った。

何かの罠かもしれない。

しかし、兵の報告では村の前にいるモンスターは警戒している様子ではなく、

ただ喋っているだけだという。

ウルフシュタットも領内や街でモンスターを見たことがないわけではない。

しかし、深く交わったことがあるわけでもなく、何を考えているのかまでは知らない。


すると神官マグダミアが




「モンスターといえども、

 共に教えに導かれる子羊であることには、かわりはないでしょう」




と馬足を進ませた。

ダミアンがマグダミア様が言うのであればとそれに続いた。

それを見たウルフシュタットも後に続かざるを得なかった。



村に近づくと門の前で喋っているのはボア族だとわかった。

むこうもこちらの接近に気づいたらしく、こちらを気にしている。


門に近づいて馬足を止めるとボア族も近づいてきて

先頭にいるマグダミアにボア族が、ニコニコしながら話しかけてきた。




「やあ、何か御用かな?」




そのボア族の戦士の問にマグダミアが答えるより早く、侍従神官が反応した。




「モンスターの分際で神官様に口を聞くとは、無礼者めっ!!」




そう言うと侍従神官は馬に打つ為に使うムチで、

問いかけて来たボア族の腕を叩いた。



後年、ウルフシュタットは執筆した自伝にはこの時のことを記している。

そこには、たしかにムチで打たれたボア族がニヤリと笑ったのを見たと書いている。

しかし、大使館で取材を受けた義清たちは国家としてこれを否定している。



そして真偽はどうであれ、このときムチで打たれたボア族は大きく悲鳴をあげた。

それに後ろにいた二人のボア族が反応する。




「どうした!?」


「腕が、俺の腕があああ、痛い痛い痛い、折れてしまったああああ」


それに馬の上から侍従神官が反応する。


「ふん、ムチで打たれたぐらいで情けない。これだからモンスターは……」


「こいつっ!!どこから物を言っている!! 何様のつもりかっ!!」




ボア族はそう言うと、片手で素早く侍従神官の足をつかむ。

そしてもう片方の手で馬の尻を叩き上げた。

驚いた馬がいななきとともに走り出して、足をつかまれている侍従神官は

馬から引きずり降ろされてしまった。




「な、何をする無礼者!!」


馬から引きずり降ろされ地面に倒れた侍従神官は、

首だけ起こしてボア族に怒鳴ったが、それ以上に大声でボア族怒鳴り上げる。


「貴様、よくも同胞を傷つけてくれたな!!

 たかがムチで打っただけだと、ならばこうしてくれるわ!!」




そういうとボア族の戦士は、

地面に横たわる侍従神官の腕を渾身の力を込めて蹴り上げた。

ゴキリと鈍い音がして、先程ボア族の戦士が上げた悲鳴とは比べ物にならない悲鳴を侍従神官はあげた。



その騒ぎを聞きつけて門から続々とボア族が出てきた。




「どうした!! なにがあった? なんだあの悲鳴は?」


「こやつが仲間の腕を折りおった」


「何だと!! それは大変だ!! 軍医を呼べ、急げ!!」


「副官殿を探して報告しろ。指示を仰げ!! 義清様の御側の守りを固めろ!!」




場が一気に騒然とし始めた。


門からは続々とボア族が出てくる。

その手には武器が握られており槍や刀を抜き身で持つ者もいる。

腕を折られたと言うボア族の戦士の元に軍医が駆けつけた。




「これはいけない!! 確かに腕が折れている!! 急いで担架で運べ」




軍医はそう言うと素早く担架を持ったボア族が駆けつけて、

負傷したというボア族を村の中に運んでいった。

そうしている間にも、続々と村からボア族が出てくる。


倒れた侍従神官は腕をかばいながら立ち上がると、

先程のボア族の戦士に怒鳴った。




「無礼者め!! 

 たかがモンスターの分際で教会の代弁者たる神官様にお使えする、

 侍従神官たる私にこのような事をして、許されると思っているのか!!」


「貴様!! 誰が立ち上がっていいと言ったあ!!

 同胞を傷つけた報いよ。こうしてくれるわ!!」




そう言うとボア族の戦士は腰の刀を抜いて、侍従神官の足の甲に突き刺した。

侍従神官が又もや大きな悲鳴をあげて地面に倒れた。




「侍従神官殿をお助けしろ!!」




ここでダミアンが声を上げた。

すぐさま部下の白色鎧の騎士たちが侍従神官の元に駆けつけようとした。

しかし、直後にウルフシュタットが否定する。




「やめなさい!! 無礼を働いたのはこちらの方です。」


「兄上、教会の者がモンスターに傷つけられたのですよ!!

 このまま放っては置けません!!」


「やめろと言っているのです!!

 今ならば、あのバカ一人くれてやれば話は収まるでしょう。

 ここで兵を動かせば私達も巻き添えを食います。ここは堪えなさい!!」




ウルフシュタットには気にかかることがあった。

あのボア族の戦士は確かにムチで打たれた時に笑っていた。

まるで手間が省けた言わんばかりの笑いだった。

それに、軍医が素早く駆けつけたのもおかしい気がする。

まるで最初からこうなることがわかって待機していたようではないか。

とどめは担架で運んでいったことだ。

見られてはまずいと言わんばかりに、村の中に隠すように連れて行ってしまった。



何かがおかしい。

ウルフシュタットの勘がそう告げている。



そうしていると門からボア族がまた一人出てきて大声で言った。




「腕を負傷した者、骨が血管を突き破っており出血中!!

 止血が難航しており軍医曰く、明日をもしれぬ命とのこと」




これに侍従神官に刀を突き刺したボア族が激昂する。




「聞いたか!!貴様のお陰で我らが同胞は明日をもしれぬ命だ!!

 この償いどうしてくれる!!」


腕を折られて足からも出血する侍従神官は地面に倒れながらそれに答える



「ま、待て。たかがムチで打たれたぐらいで、そうなるのはおかしい。

 こちらも医学の心得なら……」


「貴様!!

 またも、たかがとぬかしたか!!

 自分のしたことがわかっておらんのか!! こうしてくれるわ!!」




そう言うとボア族の戦士は今度は侍従神官の脇腹を蹴り上げた。

またも、ゴキリと鈍い音がした。どうやら今度は侍従神官の肋骨が折れたらしい。


この悲鳴に耐えられなかったのだろう。

ダミアンが再び自らの兵に侍従神官を助けるよう命令を下した。

ウルフシュタットがやめろと言うよりはやく、白色鎧のダミアンの騎士たちが侍従神官の元に駆けつけた。




侍従神官を痛めつけたボア族の戦士がまたも激昂する。




「おい、その無礼者をどこにれて行くつもりだ!!

 そいつは同胞を傷つけたのだぞ!!」




白色鎧の騎士はうるさいといいながらボア族の戦士に剣をむけた。



これがよくなかった。




「こいつら!!

 同胞を傷つけておいて、謝りもせず再びこちらに剣をむけるつもりか」




そう言うと持っていた刀を高々と上げて、腕を回した。



すると村の見張り櫓にいたボア族が角笛を吹く。


すると森からも角笛が答えた。

森からオオオーという掛け声とともに一斉にボア族とヴァラヴォルフ族の戦士たちが飛び出てきた。




これにダミアンが狼狽えながらも命令をだす。





「あわてるな、全速力で引き返すぞ!!

 森からここまでは距離がある。広場の距離の分だけこちらが有利だ。

 急いで引き返すぞ!!」


「無駄ですね」


ウルフシュタットがため息まじりに言う。


「何を言われる兄上!?」


「見なさい。私達が通ってきた道を」




ウルフシュタットの言葉にダミアンあわてて森の一本道をみる。


そこには森から出てくるヴァラヴォルフの戦士たちの姿があった。

手には盾と弓を持って矢筒を背負っている。

やがて、隊列を組んで完全に道を封鎖してしまった。

無理に道を突破しようとすれば矢嵐に晒されてひとたまりもないことは、誰の目にも明らかだった。



ウルフシュタットとダミアン達は完全に包囲されてしまった。


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