46話 因果応報


山賊の親分は全力で走っていたところを、後ろから矢が刺さったので、

バランスを崩して派手に転んだ。




「だましたな!!てめえ、なんて卑怯なやつだ!!」




親分は矢が後ろからから刺さった肩を押さえながらゼノビアに怒鳴った。


すぐさまゼノビアの部下のヴァラヴォルフの戦士たちが、

親分のもとに駆け寄って地面に押さえつけた。



親分に突き飛ばされ、それを受け止めたゼノビアの腕の中にいる娘は、

その様子を見ながら不思議そうな顔をしながらゼノビアに尋ねる。




「逃してやるんじゃないの?」


「アハハハハハッ、そんな理由ないだろう。逃してこっちに何の得があるってんだい」




ヴァラヴォルフの戦士たちが、ゼノビアと娘の前へ親分がを引きずり出した。

親分はゼノビアに向かって、また怒鳴り散らした。




「だましたな!! この卑怯モンがぁっ!!」


「あんたバカだろ。自分でも言ってたじゃないか『娘を放した途端に俺を殺すつもりだろう』って、

 人質もいない、何の価値もないアンタをどうして逃がすと思う?」


「くそっ! たかがメス狼の分際で舐めやがって!! ぶっ殺してやるからな!!」


「楽しみに待ってるよ。それ、縛り上げなっ」


「まって、そいつを殺してよ!!」



娘が再び涙声でゼノビアに懇願する。




「そいつは私達に一生消えない酷いことをしたのよ!!

 そんなヤツがこの先も生き続けるなんておかしいわ!! いますぐ殺して!!」


「悪いけどねお嬢ちゃん、こいつは村に連れて帰ってそれからどうするか決めるんだ。

 アタシ達がアンタの村に信用されるかどうか、この山賊退治が一種の試験みたいなもんなんだよ」


「そんなことどうだっていいわ!! 今すぐコイツを殺して!!」



昨夜の人生でもっとも悲惨な一夜が、娘にとってはどうしても許せないのだ。

この山賊の親分を殺したところで自分の汚された体がもとに戻るわけではないが、

そんな事とは関係なしに、ただ単純にこの男の事が許せず憎たらしいのだ。



もちろんゼノビアも娘のされた酷い行為には同情している。

だからこそ、娘が理性ではなく感情だけで物を言っていることもわかっている。

そして、そんな人間に何を言っても理解してもらえないことも知っている。

死んでほしい人間には、なんとしても死んでもらいたいのだ。



ゼノビアがどうしたものかと思っていると、

背後の森からラインハルトの声がした。




「お、俺にいい考えがある!」


「ラインハルト殿! まだ話は終わっておりませんぞ。

 だいたい、あなたは書類しごとにしても……」





ラインハルトに続いて森から出てきたのはゼノビアの副官だ。



実のところラインハルトには何の考えもない。

目の前で山賊達が退治が終わったのに、

ゼノビアの副官の説教が全く終わる気配がないので嫌気が差しておもわず声を上げたのだ。

ゼノビアはそのことに気づいているので、ニヤニヤしながらラインハルトに話しかける。




「へえ、ラインハルト。それじゃあ、さっそくその考えを教えてくれないかい?」


「い、いいとも。そうだな。えーと、あーと」




ラインハルトは必死になって辺りを見回して、何かヒントになることはなないかと探した。

やがて、焚き火の近くに置いてあった、火かき棒が目にとまって閃いた。


ラインハルトは急いで焚き火まで走って火かき棒を拾う。

それから適当な岩を探して、火かき棒の先端を岩に擦りつけて、

尖った先端が丸くなるように削った。


そして急いでゼノビアと娘の元まで戻ってくると、

ラインハルトはここでしまった、ある事が気にかかって娘に聞いた。




「娘よ、お前は人間だがもしかして、『遊び穴』を持っていたりするのか?

 昨夜傷つけられたのはその穴か?」


「遊び穴? なんですかそれ?」


「種族によっては子供を生む穴とは別に、遊びに使う穴を持っていたりするのだ。

 遊び穴の相性で夫を決めたりする種族もある。

 ミノタウロスやケンタウロスあたりが遊び穴をもつのでは有名な種族だ」


「も、持っていません、そんな穴!!」


「それはよかった! どれ、ではこの棒を使え」




ラインは先程見つけてた火かき棒を娘に手渡した。

キョトンとする娘にラインハルトは言う。




「お前が体を汚されたことには同情する。残念だが時間を戻すことはできない。

 だが、相手を同じ目に合わせてやることならできる」


「それって、つまり……」


「そうだ。あの親分気取りの小悪党のケツの穴をそれで突いてやるといい。

 男にとって耐え難い屈辱だし、単純に凄まじく痛い。

 残念ながら、お前の望む殺すことはできんが、同じ目に合わせてやれ」




娘は火かき棒と親分を交互に見る。

親分はそれに恐怖して来るな寄るなと散々怒鳴った。

しかし腕を両側からヴァラヴォルフ族の戦士によって押さえつけられて、

地面に倒されているのでどうすることもできない。


やがて、娘は親分に静かに近づいていく。

ヴァラヴォルフの戦士の1人が、親分のケツを無理やり突き上げる形で持ち上げた。


親分は涙と鼻水を垂らしながらやめてくれと懇願する。

それにラインハルトが声をかける。




「諦めろ。昨夜お前も同じことを娘たちにしたのだ。因果応報だ」


ゼノビアがラインハルトに声をかけた。


「いいのかい。下手をすれば棒が腸を突き破って死んじまうよ」


「その時はその時だ。

 最悪この娘たちに親分が死んだことを証言してもらえばいいだろう。

 それに捕虜もいることだし、なんとかなるさ」


「まったく、説教逃れにしてはいい案が浮かんだじゃないか」


「とっさのことだったが、どうして中々うまくいくものだな」




やがて、森に親分の悲鳴がこだました。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


近々Twitterのアカウントを作ろうかと思ってます。


その時はフォローしていただければ幸いです。


次回更新予定日 2020/1/5

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る