86話 追撃2-3
砂丘を下ってき帝国騎兵は使者の様だ。本陣前の盆地で止まると、兜を上げて声を張り上げた。
「砂丘の上に陣取る者らよ、先程の戦い見事なり!!我ら北の地より参ったラファ‥‥」
「見え透いた事はやめらよ!」
使者の言葉は義清の声で遮られた。
使者の張り上げた大音声より小さいはずのその声は、地面の下から聞こえてくるような、低いがどこまでも通る声をしている。使者はもとより砂丘の上の帝国兵にも少なからず動揺が走った。
無論これは魔導の一種と義清の声を掛け合わせたものだ。義清は声を出すと同時に手を後ろに回して指を動かし、素早く自分の声に魔導を乗せた。それに気づいたエカテリーナが杖を軽く回して、義清から魔導を引き継ぐ。
義清もそれに気づいて視線だけエカテリーナに移すと目で礼を言った。気心しれた中だからこそ出来る阿吽の呼吸だ。
義清は大きく息を吸うと言葉を続けた。
「
これには使者もグッと言葉を飲むしか無かった。
帝国軍の作戦は一瞬で義清に看破されてしまったのだ。もはや使者はその役目を失ってしまった。
「仮にも北の地を統べる帝国がその様な始末で何とする。もとより我らに攻撃の意思はない。使者を送るならそのこと念頭に入れい!!」
義清の言葉を受けて使者は兜を降ろすと、帝国軍陣へと戻っていった。
「やりませんので?」
ラインハルトが不満ありげに義清に聞いた。
「お前の考えていることはわかるぞ。ここは我慢だ。無用に敵を作っても仕方があるまい」
ラインハルトは不満タラタラに鼻から勢いよくため息をついた。それを見てエカテリーナとベアトリスはクスクスと笑った。
やがて帝国軍陣から使者がまた下ってくると、双方の指揮官での会談を要請し、義清はこれを了承した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます