38話 出発



「それで、その母親の殊勝な心がけのお陰でギルドに入れた息子を

 つれて帰るのがアンタたちの目的ってわけだ」



ゼノビアが言うとユライが答える。




「旦那方は以外に思うかも知れないが、ギルドは信用第一なんだ。

 人の口に戸は立てられないって言うだろう。

 俺達がギルドメンバーを見捨てた事が外部に漏れる。

 するとあれだけ高い金を払ったのに肝心な時に役にたたないのかってなって、

 ギルドへの加入者が減るんだ。

 今いるメンバーも次回の更新の時は、

 ギルドを見限って加入しないかも知れない。

 俺達は常に強者を沢山抱え込んでおく必要があるんだ。

 強者が沢山いるからこそ依頼が入るし、役人も俺達に手が出せない。

 ギルドメンバーの減少はギルドの崩壊に直結するんだ。」


「だから強者だけが払える法外な金を取って、払えない者は下働きにして強者を育て上げると」


「そのとおりだ!! ゼノビアのあねさんは理解が早くて助かるな」


「なにが、あねさんだい。強者でもないその息子を助けのかい?」


「たまに、こいつみたいな運のいい奴がいるんだ。

 3年分の会員費はもらってるし、

 金が払えるならどんな奴にも分け隔てなしってのがギルドのモットーの1つなんだ」




ユライが話し終えるとゼノビアはラインハルトにどうする?と聞いた。


ラインハルトは商人へ、囮としての役回りを話し終えたところだった。

ギロリとラインハルトはユライを睨むと口をひらいた。




「いいだろう。目的がある以上、

 お前たちに来るなと言っても付いて来るのは目に見えているかなら

 邪魔にならない様に気をつけろ。自分の身は自分で守れると言ったのはお前だ。

 何かあってもこちらは助けもしないぞ」


「あ、ありがてえ!! ラインハルトの旦那、感謝するぜ」


「何が旦那だ、調子のいいやつだ」



ラインハルトは改めてユライ達に今回の山賊狩りの計画を説明しはじめた。



ゼノビアはその間に山賊狩りに動員する戦士を選抜していく。


やがて全員準備を済ませると、商人の馬車を先頭に村を出発した。



もちろん、一団の先頭で最も危険な馬車の馬を操る御者は、目に生気を宿していない、

あの商人である。





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次回更新予定日 2019/12/14

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