122話 不期遭遇
遠征軍は巡礼者の襲来で陣形が乱れており攻城どころではないため、日が暮れてから城に悟られないように一旦城と距離を取ることとなった。
その部隊移動中のこと、遠征軍最右翼部隊の1つが自分より端を行く部隊を発見。
当時は城に動きを悟られないように明かりである松明は最小限に留めていた。月明かりを頼りに移動していたが、たまたま月が雲に隠れてしまいまったくの闇となってしまった。彼らは味方が闇夜で方向を誤り、あらぬ場所へと移動していると思い注意しようとした。
接近して部隊名や領主の名を聞いてもどうも答えがチグハグである。
そこで人数を聞くと先遣隊500をはじめ全部で3000だという。発見したのが小領主であったため自分とは交流のない大貴族と思い納得したが、どうにも妙ある。3000人の大部隊が迷って右翼の端まで来るには距離がありすぎるし、そんな大規模な兵力を持っているのに名前を知らないと言うのも妙だ。
暗闇でもう一度小領主が迷った部隊に尋ねる。
「もし、御領主殿の名はなんといわれた?」
「義清様だと言うておるに。お前さては城に籠もっておるこの辺の村人か?最後の
「いえ、私は王国中央にほど近い‥‥」
「そんなことはいい。城はどっちだ、道を見失ってな。本当なら夕方にはに着くはずだったのだが‥‥」
ここで雲が晴れて月が出てきた。
月明かりで照らされた自分の間近にいる人物達は小柄で年寄りの様な顔つき。それでいて筋肉隆々で見慣れない鎧を着て両手斧を持ってる。いわゆるドワーフだ。
一瞬お互いの部隊が固まったが状況がわかるとお互い叫んだ。
「あっ!!まずい敵だ!!逃げろ!!引き返せ!!城方の夜襲だぞ!!」
「おい、敵だぞ!!遠征軍だ!!すぐ隣に敵がいるぞ。構うこたあねえ、やっちまえ!!」
少領主の部隊は慌てて逃げたがこれが良くなかった。
ドワーフの先遣隊は数に物を言わせて追い立て、少領主が逃げた先の遠征軍右翼部隊の位置を掴み取った。直後に月が雲に隠れたためドワーフ先遣隊は単独で遠征軍右翼に突撃することとなった。
先遣隊と右翼部隊の激闘が始まると騒ぎが大きくなり、遠征軍もドワーフ本隊も敵に遭遇したと知った。少しして月が再び顔を出すとドワーフ本隊は先遣隊を救援すべく全軍を遠征軍右翼部隊へとぶつける。遠征軍も敵に遭遇したとわかり急いで右翼部隊へと兵を回した。
お互い不期遭遇戦であり敵情を把握できないまま兵力の投入合戦となってしまった。
しかし、遠征軍は昼間に城方に戦いで負けていること、巡礼者に遭遇していることなどから士気が低下していた。そして遠征軍は寄り合い所帯であるため不期遭遇戦となると、これの悪い面が出た。ある部隊は敵に立ち向かうべく部隊を展開させようとし、ある部隊は最初の少領主の様に逃げようとする。
対してドワーフ部隊はというと、最初こそ先遣隊は数に物を言わせて敵を追い立てたが、押しすぎて遠征軍右翼部隊の中心近くまで入ってしまい一時孤立して劣勢となる。そこにドワーフ本隊が先遣隊を探して右翼部隊と二度目の遭遇となりここでも激闘が繰り広げられることとなる。
結局は右翼部隊の一部がドワーフの先遣隊と本隊の間で挟まれる形のなり壊滅してしまう。
先遣隊は勢いに任せて前進し、一時は遠征軍右翼の総指揮を取っているヴォルクス家の本陣であるローゼンの陣を脅かす程の位置まで接近する。
しかし、ヴォルクス家が混乱から立ち直り反撃転じたこと。ドワーフ本隊の指揮官であるドワーフ族長のガルムが、敵が万余を超す部隊であることを認識したことにより、ドワーフ勢は撤退していった。
一夜明けると城の近くの小高い丘にドワーフ勢が陣を構える事態となった。
遠征軍本陣からみれば不期遭遇戦でさえもヴォルクス家は敵を退けるということとなり、やはりヴォルクス家は無視できない存在であると認識せざるを得なくなった。加えてヴォルクス家は今や遠征が始まった当初のそれではなく、傘下に多数の領主を抱える一大勢力となっていた。
遠征軍がこれだけの混乱ぶりなので大禍国はさぞ優勢であろうと思うであろうが、以外にもそうではなかった。
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