56話 世間話

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「さて、改めて話し合いといこう」



義清がそう声を発したのは村の中の一室である。


村の中の集会所を臨時の話し合いの場にしたのだ。


義清たちの座る長テーブルには上座に義清、それから下座に向けて順に

エカテリーナ、ベアトリス、ゼノビア、ラインハルトと座っている。

机の反対側にウルフシュタットと護衛の者が二名座っている。

本来であればダミアンもいるはずだったが、決闘で負った傷がひどく同席できていない。


義清の発言にウルフシュタットが答える。




「まずは、話し合いの機会をもうけていただいたことに感謝の意を評します」


「うむ、だが、そもそも話し合いなぞ必要とは思えんがな。

 こちらは話し合うことも、了解を得る気もない。

 我らはこの地に根付くと決め、この村も民も我々の物だ。

 そちらが何を言おうが関係ないことだ」


「それは認められません。

 それはラビンス王国に対する明確な反乱です」


「反乱、大いに結構。

 そもそも、こちらはラビンス王国などどうでもいい。

 そちらがこの土地について明け渡す気がないなら、争うまで。

 槍でも弓でも持ってくるがいい」


「世間話をされてみては?」




ここで会話に割り込んだのはエカテリーナだ

義清とウルフシュタットの二人がエカテリーナの方を見る。




「さっきからお聞きしてますと、村の門で話した内容とかわりがありません。

 ここは双方、世間話でもして、お互いの腹の中の探り合いなど後回しにするほうがよろしいかと」




エカテリーナが机に出されたカップを取って水を飲み、一呼吸置いて更に続けた。




「世間話はリラックスして行うもの。ついては護衛の方にはご退出いただけないかと。

 こちらも武器を預ければ、ウルフシュタット殿の安全は保証されましょう」




エカテリーナの提案にウルフシュタットの護衛は少し渋ったが、

ウルフシュタットが命じると部屋を退出した。

ラインハルトとゼノビアは武器を配下の者に預け、

エカテリーナとベアトリスは杖を預けた。




ウルフシュタットが苦笑しながら言う。




「正直に言いましょう。助かりました。

 配下の者の手前あなた方の要求を受け入れるわけにはいかないのですよ。

 優秀な交渉官をお持ちなようですね」


「エカテリーナは我が国は宰相を努めている。

 極めて優秀なダークエルフだ。よくやったぞエカテリーナ」




義清に褒められ頭を撫でられたエカテリーナが、嬉しそうに笑いながら顔を赤らめる。




ウルフシュタットは椅子の背もたれに体を預けて息を吐き出す。

椅子がギシギシと音をだしてきしむ。




「正直なところ、こんな土地などどうでもいいのです。

 この土地は我がヴォルクス家とあまり関わりがありません。

 しかし、この土地をあなた達が奪い取るとその奪還に赴くのは我が家で、

 それを指揮するのは私の祖父なのです。そこが問題なのですよ」




ウルフシュタットは自分の祖父について簡単に義清たちに説明した。

齢60を超えるが覇気凄まじく、軍事力は王国内でも屈指の強さを誇っていること。

王国と王個人への忠誠を誓うことを自分の人生の至上としていること。

西方戦地で目覚ましい活躍をみせたこと。




「関係のない者がなぜ遠征軍指揮官などになるのだ?」




義清のもっともな質問にウルフシュタットは苦笑して答えた。


ラビンス王国ではデゴルイス4世時代から、

西方侵攻軍の最高指揮官を王国の将軍たちから選ぶことが慣例となっている。

デゴルイス4世が自ら軍事音痴であることを認めたため、

軍の指揮権を将軍たちへと託したのだ。

将軍は普通は王家ゆかりの者か軍事的な才能を有したものが、王家に乞われて王宮に入ることになる。

大きな家の者が将軍となると、その領土や軍事力を使って王国を意のままにできるため普通はその地位につくことはない。

ヴォルクス・ローゼンはこの大きな家に属するが、彼の王への類まれな忠誠心が認められて、特例として現在ヴォルクス・ローゼンは西方侵攻軍の最高指揮官の任に継いている。

そして最高指揮官交代のタイミングは、三度の大きな軍事作戦を終わらせたときである。


すでに記したようにラビンス王国の国王がデゴルイス5世に代ってから、

ラビンス王国は西方諸国から完全撤退してしまっている。

つまり三度の大きな軍事作戦を行っていないローゼンは西方侵攻軍の最高指揮官の座を、次の者へと引き継がせることができないのだ。

ファナシム聖光国の仲介で西方諸国と和平がなっている。

そのため西方侵攻軍は解散状態であり、軍はいないのに指揮官の地位だけが残る状態になってしまった。


それに目をつけた王宮が今回の東方大遠征の指揮官にローゼンを任命したのだ。

彼は史上初めて東西両方の侵攻軍の指揮官を経験することになったのだ。




「不運というか、奇縁というか、不思議なめぐり合わせで貴殿の祖父は最高指揮官の座に座っているわけだな」




義清がなんともいえない顔をして言った。

もっとも顔の半分が骨であるため、初対面のウルフシュタットからその表情を読み取ることは難しい。

ウルフシュタットも苦笑して答える。




「そういうことです。

 そして、私はできれば私はあなた方と戦いたくはありません」


「ほう、なぜかな?」


義清がニヤリと笑いながら答える。

笑ったせいで義清の奥歯がギチギチと音を立てた。


「あなたも中々意地が悪いですね。

 あなたの兵は中々に精強そうに見えました。

 そちらのボア族の長のラインハルト殿の戦いしか見ていませんが、

 あれだけの戦いができるのです。

 その下で戦う兵士たちも屈強そうに見えました」



「そして、その兵とまともにぶつかるのは、

 東方大遠征軍でもひときわ大きな家である、ヴォルクス家だと」


「その通りにです。

 縁もゆかりもない土地の為に兵に死ねとは言えませんし、

 ヴォルクス家としても兵の無駄遣いはしたくありません」


「ふーむ」



今度は義清が椅子の背もたれに体を預けて空を睨んで考える。

ウルフシュタットよりも大きなその体がもたれかかったことで、

椅子はかなり大きな音を立ててきしんだ。

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次回更新予定日 2020/2/9


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