2話 最初にして最大の功績
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ベアトリスは普段は研究室にこもり研究に没頭している。
街で売られる、古代語と呼ばれる常人には意味不能な文字が羅列されたスクロール、ほとんどの人は包み紙などに使っている無用の長物だが、を買い取り一人で解読に没頭しているのだ。
「でかしたぞ、ベアトリス。何か巨大魔法でもでたか?最後の最後で大層な事を成し遂げたな。」
義清はこのおっちょこちょいだが1つの物事に集中させれば
いずれ成果を上げる魔術師を最後だからと普段より大げさに褒めた。
「モォーだから、最後じゃありませんて。わかりますよソレ。普段そんな飛び跳ねたりしないでしょ。」
ベアトリスは笑顔と涙でクシャクシャになった顔に怒った表情まで追加して更に顔をクシャクシャにしながら頬を膨らませて言った。
「前にジードルの話をしたのを覚えていますか?」
とベアトリスに問われて義清は思い出そうと頭を捻った。
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
かつてジードルと言われる民がこの地にいたのは誰も否定できない事実である。
彼らの遺跡は時として地滑りや鉱山開発などで地表に姿を表すことがある。
その遺跡には今では用途の理解に苦しむ道具などがあり、貴重なそれらを溶かして加工すれば一儲けできる。
だが、遺跡には今なお動く罠や時には自立して動く、大小様々な防人の機械がいることもある。
義清を含めたこの世界の人々がそれらのカラクリを理解することはできなかった。
それほどまでに現代とはかけ離れた文明がこの大陸の地下に多くあるのだ。
そして彼らはこつ然と姿を消した。
今なおある遺跡にはジードルの墓だけがない。
どの古い歴史書を紐解いてもジードルと接触があったという記述は見つからない。
文字通り彼らは一斉にある日突然消えたのである。
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
こういう感じだったかと義清はベアトリスに思い出しながら言った。
「ほとんど正解です。正しくは、わずかにあったお墓も掘り返して消えたのではないか、という点を指摘できれば満点でした」
ベアトリスが得意げに、先程のクシャクシャの顔から笑顔だけになって答えた。
「それで、その雲隠れしたどこぞの民が何だというのだ?」
ラインハルトがまだ話足りないのか?、もう済んだか?という顔をしながら続きを催促した。
「なんと!!、そのジードルが消えた方法がわかったんです。」
ベアトリスがラインハルトに理解できて聞いているのかという顔をしながら
更に得意げになって答えた。
「それは、すごい!!」
今まで黙っていたエカテリーナが初めて言葉を発した。
義清も
「確かにすごいぞ、最後にして最高の金脈を掘り当てたかもしれん。今まで誰も何もわからなかった方法だ」
と改めて感心した。
「でも、他の場所で再起を図ってもこの大陸ではいずれ‥‥‥」
エカテリーナがせっかくの発見に水を指すようで悪いのだけれどもと言いたげに続けた。
すると部屋の中程からゼノビアが叫んだ。
「いや、ここは新たな地で再起を図る方が得策よ」
「今度はそこで力をつけ再起を図り、憎き彼奴ら貴族連中の首をかっ切り、いずれは国王の首さえ取って蹴飛ばしてやるわ」
と黒い尻尾をなびかせて興奮気味に続けた。
それにまたエカテリーナが反論する。
「残念だけど、この大陸で人間がいない場所を探す方が難しい」
「森の奥深くに隠れれば簡単よ」
「残念だけど昔の少人数とは違うわ。これだけの大所帯よ。力を付ける前に見つかってなぶり殺されるわ」
珍しい組み合わせで言い争っているなという顔をしているラインハルトの横から
ベアトリスがこれまた得意げに
「だいーいじょーぶでーす。行き先はこの大陸ではありませんっ!!」
と大声でいった。
ラインハルトが
「ではどこだというのだ?」
この茶番にまだ付き合わなければならんのかと言った具合に聞いた
「そ・れ・は‥‥」
「それは?」
広間の全員が聞いた。
「わっかりまてーん」
テヘペロと言いたげに勢いよくベアトリスが言い放った。
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