136話 混乱
「おお、宰相代理殿!!此度の陛下の我々に対するお気遣い、まことにありがたく存じますぞ」
大貴族の1人であるリヒャルト・ブッフホルツが酒を片手にシュタインベックに言い寄ってきた。
状況がわからず混乱するシュタインベックに貴族は更に続ける。
「国王陛下が臣下である我々貴族に、陛下への挨拶の待ち時間にこのような催しをしてくださるとは。貴族一同を代表してお礼申し上げますぞ」
「国王陛下がこれらを行ったと言うのか?」
「んん?違うのか?私はてっきり宰相である貴殿の差し金で陛下が命じたと思っていたが。しかし、待ち時間に料理と酒で舌を
「そんな建前はよい。いつからこのような催しが行われておる?」
「なんだ?貴殿1人が陛下の横で退屈して、この催しに参加できないのを妬んでいるのか?」
「そんなことはどうでもよい!!いつからこの催しが始まったのか聞いているのだ!!」
「うるさいやつだ。貴殿も陛下の横にいたなら広間の様子は手に取るようにわかるだろうに」
ブッフホルツは酒を一口飲むとそうだなと続けた。
「封土祭が始まってそれほど経っていなかったのではないかな。おお、そうだ!!貴殿が無礼者を注意しただろう。あの東から来た異形の……名をなんといったかな。とにかく、あの後に料理が運ばれてきたのだ」
ここでブッフホルツの大貴族仲間が話しかけてきた。
ブッフホルツはシュタインベックを放ってそちらの会話に加わった。
ブッフホルツからすればシュタインベックが国王を舌先でうまいように使ったと思っていたのだ。なにかうまい言い回しで国王にそれとなく根回しをして、気の聞いた催しを行った。だからブッフホルツはお世辞半分お礼半分でシュタインベックに話しかけたのだ。それなのにシュタインベックが怒っているのでブッフホルツはおもしろくなかったのだ。
(なにがありがたく存じますだ。世辞にかまっているほど私は暇ではない)
シュタインベックは心の中でブッフホルツにツバを吐いた。
(私が注意してからだと、そうじゃなかったとしてこんな馬鹿げた事をしでかすのは1人しかおるまい)
シュタインベックはこの自体の犯人と思われる、貴族列の末席にいる人物の元へと向かった。テーブルから溢れ落ちた料理が床に転がっている。シュタインベックはためらうことなくそれらを踏みつけると前と進んだ。
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