30話 夜空


義清たちが村に到着したのが昼過ぎだった。

それから一連の出来事が終わった頃には夕方近くになっていた。


城までは距離もあり夜道は危険ということもあって、

今夜は村の周りに野宿することとなった。


せめて、ラインハルトやゼノビアなど義清達の中でも幹部クラスの者たちには

村の中で寝泊まりしてもらってもかまわないと村長いった。


しかし義清はそれを丁寧に断ると村の外にテントを張って夜に備えた。


村の前の広場がいかに広いとはいえ、大軍が寝泊まりするとなれば別だ。

ボア族もヴェアヴォルフ族も一部の者たちは森に入ってテントを張っている。


スケルトン達はその更に外周で待機している。

彼らにはテントなどは必要ないのだ。



やがて日が暮れて夜が更けていった。



義清はテントから出ると酒とコップを片手に焚き火のそばまで行くと一杯やりはじめた。




「月が綺麗だと言えないのが残念だな」




夜空を見上げながら義清はいった。



夜空に月はなかった。


かわりに土星のような輪っかをもった大きな星が地平線から半分だけ姿を見せている。

その輪っかと交差するように夜空を縦に横断しているのは、

義清たちがいる星も輪っかを持っている証拠だろう。

そして、夜空にはオーロラが地平線の上に1つ。

そのオーロラから少し上に距離がおいてもう1つのオーロラ。

合計2つのオーロラが夜空にかかっていた。

他にも天の川の様な銀河が2つ、ばつ印ように交差して夜空にあった。

その他大小様々な星々が夜空を覆っている。



月はないが地球や義清たちが元いた世界よりも、にぎやかな夜空がそこにはあった。




「季節によってはあの大きな星が、完全に見えるときもあるそうですぞ。綺麗ですなー」



後ろからラインハルトが声をかけてきて義清の横にドカリと腰を下ろした。

手にはちゃっかりコップがあった。

義清の横に置いてあった酒を掴むと自分のグラスに注ぎはじめた




「それが夜空を褒めるヤツのやることかい」



義清の向かいのテントの影からゼノビアが現れてラインハルトにいった。




「お前だってグラスを持っているじゃないか」


「アタシはちゃんと酒も持ってきてるよ」



そう言うとゼノビアは焚き火を挟んで義清の向かいに座ると

自分のグラスに酒を注ぎはじめた。



「あらあら、みなさんおそろいで」


「ベアトリスも仲間にいれてください!!」


左右のテントの影からエカテリーナとベアトリスが姿を現すと

焚き火の周りに座った。

5人で焚き火を囲む車座が出来上がった。

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