29 神々の黄昏


「コれヨり我らは貴殿に従ウ」




義清の前に立ったスケルトン総指揮官は意外なことを言った

義清が驚きながら答えた。




「突然どうした? 大主教を取り戻したのだ。

 もうワシらとは関わり合う必要がないだろう?」


「大主教ガ神々の黄昏の始マりを宣言された。開始さレたのは貴殿だ。

 ダから我々は貴殿に従ウ。共に神々ヲ黄昏へト追い落とすのダ」



どうもスケルトンはコミュニケーションに難があるなと義清が思っていると、

大主教が話しかけてきた。




「ワタシが持つ経典にハ

 『神々を黄昏に導く者、異界より来たりて身から赤き光を漏らす。』とある。

 先程、貴殿はアの商人を傷つケる時に腹かラ剣を抜いタ。

 ソの時に確かニ赤い光を放ってイた。貴殿は神々ヲ黄昏へと追いやる者ダ」


「その持っている本が経典か? 他に何と書いてある? 詳しいことがわからんぞ」


「詳しいコとはわかラない。ワタシも経典を全て読めルわけではナい。

 読めルのはほんの一部だけダ。コれを使いダークナイトとスケルトンを作ル。

 ソして神々を黄昏へと追い落とス者と出会った時に備えるのだ。今がその時なノだ」




大主教も総指揮官もこれで説明した気になっているのだ。

スケルトンは喋る言葉に特徴がある以上に、コミュニケーションに難があるようだ。

義清は詳しい説明を求めることを諦めた

かわりにため息をつきながら聞いた。




「わかった。わかった。味方が増えるのはいいことだ。

 傘下に入りたければ入ればよかろう。せめて神々の黄昏が何かはわからんのか?」


「人はアる時から神々に縛らレてイる。古い古い時代かラだ。

 導く者はソれを終わラせる。かツては違った。古きもの達が見てイただけダ。

 古き者たチは神々に囚われテいなくナった。以来、人は神に縛らレてイる。

 導ク者は古きもの達を再び呼び起こス。そシて神々に挑み人を縛リから開放すルのだ」


「要はワシが誰かを呼び起こして神々を倒して人々を開放するのか。

 話が壮大だが、味方してくれるなら何でもよかろう。

 ワシらはこれからラビンス王国から多くを奪おう賭しているのだ。

 やっていることが経典に書いてある事と真逆な気がするがな」


「全ては神々を黄昏へと追い落とスため、人を開放すル大いなる目的のたメ。

 アらゆるコとが小さな事にすぎナい」




宗教にのめり込みすぎた者が陥りそうな論理だ。

しかし、それを大主教に言ったところで通用しないだろうと、義清はあきらめた。




「わかった。わかった。古き者がなにか、神々がなぜ人を縛るのか、

 なぜ神々は古きもの達は神に囚われたのか。

 これらを聞いても答えは返ってこなさそうだな。

 好きにしろ。ガシャ髑髏もスケルトンも立派な戦力になる。

 特に指揮官級は喉から手が出るほど欲しい逸材だ。仲間になるならありがたい」



義清はたくさんある疑問を全て飲みこんで無理やり納得した。

大主教の横から総指揮官が義清に話しかける。




「ではスケルトン達を森から呼ぼう。村の周りを警護させる」




そう言って総指揮官は他の数人のガシャ髑髏を従えて門へと向かった。

その背中を見て義清はふと




(ひょっとしてアレは、大主教を取り戻して喜んでいる顔なのかもしれんな)




と思いながら、スケルトン総指揮官を見送った。


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