10話 思わぬ褒美
「いらぬ者たちまで混じっておるぞ」
言葉とは裏腹にラインハルトが嬉しそうに言った。
「殺ったあとの処理が面倒そうだね」
ゼノビアがこちらも面倒臭さはほとんど匂わせず、嬉しそうに言っている。
二人は本丸に設けられた
下から義清の声がした。
「どうだ、二人とも。おおまかにわかれば、それで良いぞ」
義清の両隣にはエカテリーナのベアトリスがいた。
城内は転移前とは様変わりしていた。
モンスターである義清の軍勢は転移後は一旦は意識を失ったものの
各々で意識を取り戻し、転移前の戦での負傷者の手当てや散らばった物資の整頓に努めている。
一方で人間である貴族連盟の軍勢は未だに動かない。
所々で起き上がり始めた者もいるが義清の軍勢ほどではなく
統制を取り戻した義清の軍勢とは対象的だった。
「ここは一挙に討って出て蹴散らしてしまうのが得策かと思われます」
櫓から降りたラインハルトが味方の持てる兵力の全てを使い
一気に敵を片付ける考えを義清に進言した。
それにベアトリスが続けて言った。
「異論なし。大手門の橋が落ちている以上、敵が指揮系統を回復すれば退却できないことに気づくはず。そうなれば死にもの狂いでかかってきます。それでは数で劣る、お味方の敗北は必至です。」
ベアトリスもラインハルトの考えを支持し、二人から仰ぎ見られる義清が言った。
「二人の言もっともである。敵兵根切りに(全滅の意)すべし。エカテリーナ、その方が全体の指揮をとれ」
言われたエカテリーナが心得ましたと答えた。
続けて義清はベアトリスの方に向き直ると笑顔で言った。
「ベアトリス、此の度の功績はそなたが一番大きい。褒美も期待して良いぞ。望みは何でも言うがいい」
ベアトリスが少しうつむき、顔を上げると意を決して言った。
「本当に何でもいいのですか?」
「無論だ。そなたがおらねば私を含めて、ここにいる全員が死んでいたのだからな」
「では、義清様との子供がほしいです。」
魔女帽子をとり、長い
ベアトリスが顔を赤らめながら言った。
その場にいるベアトリスを除く全員が固まった。
やや間をおいてゼノビアがどうしたものかと口を開いてエカテリーナそれに続いた。
「それは、少々‥‥褒美とは違うのではないかな」
「そ、そうですな。だいたい、片方だけが望んで創るものでもないですしな」
またやや間をおいて義清が言った。
「よかろう。我が子種をくれてやろう」
全員が義清に視線をやり本当にいいのかと目線で問うた。
視線に気づいた義清が咳払いをして言葉を続けた。
「さ、さっきも言ったがベアトリスの功績無くば我々は皆死んでいたのだ。それを考えれば子種の一つや二つ渡して然しかるべきと言うものであろう。」
「一人じゃなくて二人もつくっていいのですか?」
眼をランランと輝かせながら聞くベアトリスに義清は慌てて言った。
「今のは言葉のアヤだ。一つだけだ。与える子種は一つだけ。」
後に義清はこのときの判断を深く後悔し、なんとか違う考えをこの時にひねり出しておくべきだったとラインハルトに漏らしている。
「大兵とはいえ動かけぬ相手などその方らだけで十分であろう」
義清は寄ってきたベアトリスを片腕に抱くとラインハルトとゼノビアに言った。
ラインハルトとゼノビアがそれに答える。
「次に本丸より御出になる時は、敵兵全ての胴と首を離してご覧に入れまする」
「手抜かりなく、憎き貴族が首を
片腕に抱いたベアトリスを優しく撫でるとそっと手を離し、
二人の戦士に近づいた義清は顔が触れるほど近くで言った。
「先程も言ったが捕虜はいらん」
今から寝所へと入るものへ聞かせたくなかったのであろう、その言葉は
短いが冷酷なものだった。
二人の戦士は
義清は恍惚とするベアトリスを伴い本丸へと入った。
この久しぶりの行為を前に、義清はエカテリーナがうつむいているのを見逃していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます