179話 布陣
ケプラーはまず、左翼に展開するボア族の騎兵を全て右翼へと移動させた。
長い松明の列がそれなりに速い速度で右翼へと移動する。
ボア族が騎乗するラハブを使って、高速で移動しないのはラハブを疲れさせないためだ。
人間もラハブも原理は同じだ。
一日の間に動ける距離と体力は決まっている。
今ここで高速で移動すると、いざ戦場で走る際の脚力が落ちるのだ。
しかし、ラハブは人間とは違い、歩幅も広く体力もずっとある。
そんなラハブにのるボア族騎兵隊である
当然、近衛師団からもこの動きは見えた。
人間よりも明らかに速い速度で移動する集団。
すぐに騎兵とわかり、近衛師団でもこれに対応すべく右翼の騎兵を左翼へと移動させた。
しかし、これこそがケプラーの仕掛けた作戦だった。
進牽隊は右翼へと到達すると、松明を地面に設置すると元の左翼へと引き返した。
ヴァラヴォルフ族の騎兵が入れ替わるように、ボア族進牽隊が設置した松明の場へと移動する。
これで近衛師団からは2つの騎兵部隊が、一箇所にいるようにみえるというわけだ。
進牽隊は少数の松明を焚いて闇世の中を移動する。
これで近衛師団には騎兵が、再び大禍国左翼に配置されたことがわからない。
(作戦は単純であればあるほどいい。複雑なのはかえって味方との連携を欠く)
そう考えたケプラーは進牽隊を左翼に移動させたあとに、大きく迂回させて森の中を進ませた。
大禍国勢から見て左翼には森が広がっている。
ケプラーは大胆にもこの森の中を通る小道に進牽隊を進出させた。
騎兵を森の中に入れると走り回る場がなく危険だ。
騎兵にはある程度の走り回る場がないと衝撃力が生まれない。
その衝撃力を使って騎兵は敵の部隊を突破するのだ。
走れない騎兵などただの的でしかない。
歩兵部隊でさえ森の小道を進むのは危険だ。
長い隊列を作って進む部隊は左右からの攻撃に弱く、分断されて各個撃破されやすい。
仮にこの作戦をヴァラヴォルフ族に頼んだら、彼らは拒否しただろう。
それくらい騎兵を森の中に入れるのは危険な賭けなのだ。
自部族の副長からの命令であるからボア族は動いたのだ。
それに、夜が明ける前に戦を終わらせないといけないという思いは誰しも持っていた。
そうしなければ王宮に攻め上る時間がない。
兵をできるだけ疲労させず、短時間で近衛師団と決着つける。
これが今大禍国勢が最も求めることだった。
それには奇襲が一番いいというのがケプラーのだした答えだ。
だから、彼はボア族騎乗隊である進牽隊を危険な森の中へと入れた。
この試みが成功すれば、近衛師団に気づかれることなくその側面に回ることができる。
凄まじい突破力を持った騎兵が、敵の弱点である側面を突くとどうなるかは想像に難くないはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます