51話 黒母衣衆



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黒母衣衆くろほろしゅうだ。大殿の親衛隊だぞ」


「義清様のお側に仕えるものが、なぜここにいる?」


「まて、何かいうぞ。みんな、静まれっ!!」


黒母衣衆くろほろしゅうの者だ、道を開けろっ!!

 大殿がお通りになる。みんな道をあけよ」




黒母衣衆くろほろしゅうと呼ばれた者たちは大殿である、義清の親衛隊の役割を担っている。

ヴァラヴォルフ族とボア族から特に優秀な者を集めて組まれたこの部隊は、

精鋭中の精鋭が集まる部隊だ。


母衣ほろとは縦に縫い合わせた、縦2m横1mほどの長い布を、首、冑、手の甲などに紐で結びつけて、それが風でふくらむことで、後方からの弓矢や石を防ぐ役割を果たす防具の一種である。

イメージとしては、大きな布でできた風船を鎧の後ろにつける形になる。

馬上で使うことが前提の防具なので、普段の徒歩でいるときはは着用していない。


この防具を使うものは伝令や、戦場で特に存在感をだしたい者だ。


伝令は重要な言伝を運んでいることが多く、一分でも速く目的の場所に着くことが求められる。

そのため、戦場では階級や地位に関係なく、伝令が走って来るときは道を開けなければならい。

それには伝令がひと目でそれとわかる方がよい。

それには目立たせるのが一番ということで、こうした防具をつけているのだ。

当然、敵から見ても一目瞭然なので、伝令には敵をあしらう能力、

そのための馬術、なにより戦士としての屈強さが求められるのだ。


伝令は軽い役職ではなく、ただ戦うだけの能を持つだけでは務まらない重要な役職なのだ。


黒母衣衆くろほろしゅうとはそうした戦士として超一流の者たちを集めた部隊だ。



やがて、黒母衣衆くろほろしゅうに囲まれて義清が現れた。



その場にいたウルフシュタットはもちろん、ダミアンや神官マグダミアでさえも、

義清の異様な容姿に一瞬言葉を失った。



目から鼻先にかけてのむき出しの骨。

そのむき出しの骨から覗く目玉ではなく、赤いだけの眼光

鎖骨近辺から首にかけての漆黒の闇。

腹筋の割れ目から僅かにでる赤い光。



鎧と陣羽織を着ているとはいえ、周りよりも頭一つ高い高身長な義清は異様だった。


義清が副官に後を引き継ぐと言ってウルフシュタットの前にたった。

副官はこれまでウルフシュタットと話した内容を報告して義清の後ろに下がる。

義清がそれを聞いたあと、ウルフシュタットに話しかけた。




「ワシの配下を傷つけることでは飽き足らず、剣までむけるとは。

 兵が騒がしいので出向いてみれば、なんともおかしな人達だ。

 自殺願望があるなら、他所でやってもらいたい。

 そうすればこちらも兵を抑えるのにいちいち大声をあげなくて済む」


「不手際があったこと、お詫びします。

 ついては、償いとしてあの侍従神官を差し出すので、

 ご勘弁いただけないでしょうか。

 ラビンス王国に仕えるものとして、この地を明け渡すことはできません」


「ハハハハハ、明け渡してもらおうなどとは考えてもいない。

 ワシらはこの地に根付くと決めた。それに丁度いい民を見つけただけの事。

 そちらの了解を得ようなどとは、これっぽっちも考えてなどおらん」


「それは、つまり……」


「そうよ、ワシらこの地をかすめ取るのよ。

 ワシらこの地で覇を唱える悪党モンスター。

 悪党がなぜ他人の了解なんぞ得なければならん。

 欲しいものは実力で奪い取るまで。誰のいうことも聞く気はないわっ!!」




ウルフシュタットはこの言葉に一瞬虚を疲れて黙ってしまった。


これが事態をさらに複雑にしてしまった。


正義感に駆られたのかダミアンが馬上から大声で怒鳴った。




「そんな事が許されるはずがない!!

 王国の土地と民を何だと思っているっ

 ここはれっきとしたラビンス王国ののもの。それを悪党を自称するものに渡しはしない!!」


「おだまりなさい、ダミアン!! あなたは黙っているのですっ!!」




ウルフシュタットは怒鳴ったが、義清はそれに構わずダミアンに答えた。




「ほう、ならばどうすのだ?

 見たところ、お前がこの中では一番マヌケに見えるが」


「なんだとっ!?」


「そうだろう。周りを大勢のこちらの兵に囲まれ、こちらの御人が穏やかに話しているのに、

 お前一人だけ馬上から偉そうに理想を説いている。

 この圧倒的に不利な状況でお前になにができる?

 馬から降りもせずに失礼な物言いをして、それだけでも万死に値する」




その言葉に反応して義清の後ろに控える黒母衣衆くろほろしゅうがダミアンに弓を向けた。


それを見たウルフシュタットは慌てて会話に割り込んだ。




「おまちください!!

 あれは私の弟で最近まで王都におり、世間慣れしていないのです。

 どうか非礼をお許し願いたい。

 話は私がしますので、あやつのいうことは無視してください」


「左様か。まあ、初対面ゆえの誤解ということにしておこう。

 さて、話を戻すと、今回の不祥事どうして償っていただけますかな」




ウルフシュタットが冷や汗を流しながら、何か考えがないかと必死に考えていると、

村の見張り台に立つ見張りが声をあげた。




「何者か村に接近してきます!!森の道の方からです!!」




その場にいる全員が森の道を見る。

ヴァラヴォルフの弓隊が塞ぐ道のさらにずっと奥。

森が少し丘になっている道から土煙があがっている。

やがて村に近づいてくるとその正体がわかった。




「あれはラインハルト様だ!!」


「ゼノビア様もいるぞ!!」


「山賊討伐隊が戻ったぞ」


「首尾よく山賊を根絶やしにしたに違いない」


「これで鬼に金棒だ」


「同胞を傷つけられた恨みを晴らすときだ」


「詫びの一言も無いとは失礼な奴らだ」


「生意気な人間などぶち殺してしまえ!!」




黒母衣衆くろほろしゅうはもとよりボア族、ヴァラヴォルフ族が一斉に歓喜と興奮の声を上げた。

みんな口々に同胞の恨みをはらすべし、無礼者斬るべしと叫んでいる。

ウルフシュタット一行はそれに動揺した。



その動揺があまりに激しすぎて、

義清とボア族の副官がラインハルト達がこちらに来るのを見ながら、

困った顔をしてお互いの顔を見合わせているのに気づく余裕はなかった。


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次回更新予定日 2020/1/24


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