105話 魔導
「まーだ泣いてるんですか、エカテリーナさん?」
ベアトリスは机に突っ伏してベソをかいているエカテリーナに言う。
「泣きたくもなるわよ!!これだけ生きてきて敵の魔導どころか魔法すら感知できないなんてありえないわ!!」
エカテリーナはいきなり立ち上がると杖を振り回して喚き散らした。
エカテリーナの周りには鉱石や水晶玉、スクロールや魔導書などが雑然と散らばっている。
遠征軍の魔導を探知するためにエカテリーナが知る限りのありとあらゆる方法を試したのだろう。
「どぉーせ私は弱小魔道士ですよーだ。なーんにも感じ取れやしませんよーだ」
エカテリーナは再び机に突っ伏すと、またもやベソをかきだした。
「そんなエカテリーナさんに、お知らせがあります」
「なによ?」
ベアトリスの言葉にエカテリーナは鼻をすすりながら答える。
「なんと、その泣きじゃくった汚い顔を、先程から義清様が見ています!!」
そういうとベアトリスは半開きになった、部屋の扉を指差した。
扉からは義清様が顔を半分だして部屋の中を覗いている。
「ちょっと!!先にそういう事はいいなさいよね!!」
エカテリーナは立ち上がって泣いて腫れ上がった顔をゴシゴシと擦る。
その姿を見て義清は部屋へと入ってきた。
「ハッハッハ、エカテリーナ随分と落ち込んでおるようだな」
「と、とんだ醜態を晒しましたわ」
エカテリーナは恥ずかしいやら情けないやらで、しどろもどろになりながら答えた。
「やはり敵の魔導と同調できんか?」
一息置いて義清はエカテリーナに尋ねた。
「情けない限りですけど、どうしてもできませんわ」
義清はアゴに手を置きしばらく考えて答えを出した。
「出てないのかもしれん、敵の魔導事態が。それ故にこちらも敵の魔導に同調できんのだ」
「まさか!?攻撃魔導やそれに付随する導補魔導も、探知魔導も無いなんてありえませんわ」
「ワシも最初はそう思ったが、先程馬出しでな‥‥」
義清は先程のゼノビアの馬出しからの一斉射で、遠征軍の前線部隊が盾ごと貫かれた事をエカテリーナに話して聞かせた。
「‥‥ありえませんわ。いくらドワーフが丹精込めて作った矢に、私とベアトリスの魔導を練り込んだとはいえ、一撃で敵の
「よっぽど私の魔導が優秀だったんですね!!」
ベアトリスがここぞとばかりに胸を張った。
「あなたの魔導でこうなったなら、ワタクシの魔導は今頃敵の軍勢を一掃してますわ」
エカテリーナはため息混じりに答えた。
「見たところ敵は防殻どころか防御の魔法を盾に付与したように見えたぞ」
義清はベアトリスの頭をなでながら答える。ベアトリスは嬉しそうにデレデレとしている。
「‥‥今更防御の、しかも魔法を使うなんて考えられませんわ。何かの罠でわなくて?」
デレるベアトリスを恨めしそうに見ながらエカテリーナは答えた。
魔導は魔法の上位に位置する。
魔法は無詠唱で発動することも多い。一方でファイアボールなどの極めて単純な魔法は詠唱した方がより効果的だ。これは発動する魔法が単純であればあるほど効果量が大きくなる。
対称的に魔導は必ず詠唱を必要とする。効果は魔法が遠く及ぶものではない。
魔導は一種の契約であるとされる。魔導の多くにかつての神やそれに近い言葉が
一説によれば魔導を唱えたものはいずれはその代償を払わなければならず、死後にそれが待っているという。故に魔導は軽々しく使うものではなく、極力魔法を使うべきであるとする流派も存在する。
一方では別の解釈があり、魔導を祝福と同義と解釈する流派もある。こちらの解釈では、詠唱とは神の祝福が次元を超える手助けをする為のものであり、魔導が発動した時点で一連の行為は終わったものと解釈している。
他にも大小様々な流派が存在するが、共通していることは魔導は何らかの契約からくるものと断じている点だ。ただし契約主が魔導使用者に害を及ぼす存在か否かに関しては意見が別れている。
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