63話 シュレンゲ
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「おおー。無事だったか!!」
そう言ってヴァジムは砂埃を上げながら近づいてきたトカゲを抱きしめた。
「紹介しよう。これが前に話した俺のシュレンゲだ」
シュレンゲと呼ばれた生き物は体長が4mもある巨体だった。
コモドドラゴンの様な巨体に頭の付け根から首の終わりまで、
立派なたてがみが生えている。
たてがみは固いが触ると根本がペタンと折れるほど柔軟だ。
首の始まりからは襟巻きがついていた。
おりたたまれた襟巻きは首の終わりまであり、威嚇の時に広げるという。
個体によっては襟巻きの中に毒針を持っている個体もおり、
襟巻きを相手に向かって広げると同時に毒針を飛ばして獲物を仕留めるという。
よく見ると特徴的な襟巻きは首の横から生えており、
体の上下には生えていなかった。
恐らく移動にはこちらの構造の方が便利なのだろう。
全身が黄色の鱗で覆われており鱗の端が黒く縁取られている。
砂漠に特化した迷彩だ。
獲物を狩る時に砂に体を埋めるので、そうなったら見つけるのは至難の業だという。
よく見ると鱗の裏は緑色になっている。
襟巻きも広げると中は緑色だった。
ヴァジムによると大森林の北にもシュレンゲは野生で生息しているという。
そこの個体は全身が緑色の鱗で覆われており、逆に鱗の裏と襟巻きの裏は黄色だそうだ。
それを聞いたベアトリスは、同じ生き物でも住む場所によって色がかわることはあると言った。
どうやらベアトリスは蟲をペットのようにしていることもあり、
シュレンゲに興味津々なようだ。
近寄ってしきりに体を触ったり撫で回して、鱗の裏や襟巻きを観察している。
そんなベアトリスに構うことなくシュレンゲはヴァジムにまるで猫が主人にする様に、体を擦りつけて再会を喜んでいた。
ヴァジムも嬉しそうにシュレンゲの頭をなでている。
頭を撫でられる度にシュレンゲは太い尻尾を横に振った。
降る度にブンブンと風切り音がするほど尻尾は太い。
シュレンゲはひとしきりヴァジムとじゃれ合うと砂の河に入っていった。
義清が不思議に思ってヴァジムに尋ねた。
「なぜじゃれ合っていたのに河に入ったんだ?」
「たぶん俺に褒められたいんだ」
話しているとシュレンゲは潜っていた巨体を砂の河の上に出してきた。
ヴァジムと義清からみてやや下流に姿を表したところをみると、
砂の河に潜っている間に移動したのだろう。
するとシュレンゲは襟巻きを広げ始めた。
完全に開いた襟巻きを後方に向かって勢いよく閉じる。
そうすることで砂が後方に勢いよく噴射された。
これを素早く繰り返してシュレンゲは砂の河の上を高速で移動していく。
「驚いた。あの襟巻きはああして使うのか。
あんなスピードで砂の河を進めたら誰も追いつけんな」
砂の河で素早い移動をみせるシュレンゲに義清は驚きの声を漏らした。
「人を乗せたら多少速度は落ちるが、
この砂漠でシュレンゲたちほど砂の河を早く渡れる生き物はいないだろうな」
ヴァジムが自慢気に答えた。
砂の河から上がったシュレンゲはヴァジムの元まで来ると、
頭を下に向けて2,3回嘔吐くと、口から石の塊をいくつか吐き出した。
ヴァジムはそれを手にとって良くやったと褒めた。
シュレンゲは尻尾をブンブンと振って喜んだ。
義清も鉱石を手にとってみる。
「これがこの地特産の鉱石か、どれどれ」
拳よりも大きな石の塊の中から赤い石が露出している。
義清は他の石も手にとって見た。
こちらは緑色の石こちらは青色の石と、石の塊の中から色の違うきれいな石が光っている。
「これは、宝石‥‥ではないのか?
すごいな、こんな物が砂の河からとれるのか。これはすごいことだぞ」
驚く義清にヴァジムがさらに驚くことを言った。
「それはどちらかと言えばクズの部類に入る石だ。
それはこいつらシュレンゲに食わせてもいい。上物だけを売り物にするんだ」
「売り物とクズの分別はどうしているんだ?」
「北の帝国の商人が買ってくれるかどうかだ」
(この宝石がクズ?)
義清は思わず手の中にある宝石が含まれた石の塊を見る。
「そら、こっちが上物だな」
そう言ってヴァジムが義清に宝石が含まれた別の石を取ってよこした。
その石では宝石の大部分が露出しており、石の部分が少ない。
(おそらく、加工技術の問題だ。
北の帝国商人はある程度宝石が露出していないと、
石から宝石を取り出せないのだろう。
削り出せないと言うべきかな。
もしくは加工する際の費用が高くて石の部分が多いと高くつくのだ)
義清は二つの石を見比べてあれこれ思いを巡らせたがたどり着いた結論は一つだった。
(いずれにしても、これは金になる)
義清はヴァジムの方を向くとワシの国との取引ならば、
このクズの石でも買い取ってもいいと言った。
ヴァジムは驚き喜んだ。
ヴァジムによるとシュレンゲは雑食なので別に食べ物があるので気にすることはないという。
義清がドワーフたちが掘る銀鉱山ででた廃物を、クロディスの民に進呈することを提案するとヴァジムは喜んで了承した。シュレンゲはそれらの石を喜んで食べるという。
義清たちの物資から鞍を借りヴァジムはシュレンゲに騎乗した。
シュレンゲは水質や匂いを肌で感じることができるといい、オアシスまでの道案内はずっと楽になるそうだ。
シュレンゲには劣るが砂漠の民であるクロディスの民も同じ性質を持っていると良い。
砂漠であるかぎりヴァラヴォルフ族にもまさる嗅覚をみせるという。
義清たちはシュレンゲにまたがったヴァジムの案内のもと、
クロディスの民を開放すべく砂漠を進んだ。
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次回更新予定日 2020/3/15
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