第八幕『再会』
俺は背負っていたボウガンを構え、分断された処刑台に向かって発射した。氷の壁に刺さったアンカーに繋がるロープを手早く塔の壁に打ち付け、ボウガンを引っかけて滑空する。ズシャ、と足下で砂利が鳴って、俺は処刑台の横に降り立った。振り返った先で再びあの輝く瞳と視線を交わす。
「よう、ご機嫌いかが?」
「最高だよ、海賊船長」
重石の下でメーヴォが苦笑する。待たせやがって、とでも言いたげな顔だ。
「随分待たせてくれたな。来ないかと思ってたよ」
「あ、本当に言いやがった。流石の俺でも牢屋の中からは出してやれないんでね、表に出て来るまで待ってたわ」
「派手な登場には恐れ入ったよ」
減らず口が絶えねぇ男だな。嫌いじゃねぇが。
感心しているのも束の間、どうやら処刑人が取り押さえられたらしく、氷の壁の向こうを国軍海軍入り乱れた一群が一斉に囲み、それを崩そうと攻撃を始めていた。
「なあ、ところでよ。メーヴォって言ったな爆弾魔。お前、好きな女いるか?」
「それは今答えるべき質問か?」
「もちろん、そうでなきゃ聞かねぇよ」
「僕の好きだった女は……初恋の相手は、両親の次に吹き飛ばして殺した」
それを聞いて思わずゾクゾクと背筋が震えた。
「お前サイっコーだな!」
笑って重石を蹴り上げれば、身を擦られる痛みにメーヴォが顔を歪めた。自由になった体を起こし、腕の枷を撃ち抜いて割ると、助かった、と口にする。
「ホラよ、お前さんのだろう?大事にしろよ」
「……言われずとも」
メーヴォの所持品だった眼鏡と真っ赤な鞭を投げてやると、奴はニヤリとその口元を歪めた。やっぱりコイツは相当な同類だ。
「で、脱出はどうするつもりだ?」
「そうだな、このアンカーをもう一度向こうの壁に撃ちたいんだが……」
「どうやってアレを外すつもりだ?」
塔の壁に固定されたままのロープを顎で差してメーヴォが問う。
「ほら、それはお前さんの初仕事だろ」
食えぬ男だ、と鼻で笑うと、メーヴォはその真っ赤な鞭を振るった。何がどうなったのか、バチバチと火花が走ったかと思うと塔の上で爆発が起こり、更にもう一振りで氷の壁の上部が吹き飛び、アンカーがロープごと俺の足下に落ちてきた。
「えっ、凄くね今の」
「早くしろ、海軍が壁を壊すぞ」
あらヤダ、実は威張りん坊なの?
「お前、船長に命令するんじゃねぇよ!」
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