第七幕『対峙』

「熊の討伐ご苦労。俺たちに恩を着せようと言うならお門違いだぞ。アレについては俺たちも察知していた。むしろ得物を横取りされたと言っても過言ではないんでな」

「おっと、そいつは失礼した。俺たちが欲しいのは食糧なんで、何なら熊の毛皮はお譲りするが?」

「熊の毛皮に用は無い。ついでに言えば熊肉はウチでは食べないのでね」


 じゃ何だよ、と小さく呟き、しかしコレはまずったかな?と言う顔のラースに、そろそろ助け舟でも出してやるべきだろうか。


 川辺に未だ沢山のサーモンが跳ね回っている。翠鳥たちは網でそれを獲っていた様だが、水嵩の多さに上手く行っている様子は見えない。彼らの足元に置かれたサーモンの数は高が知れていた。


「バラキア船長。お目当てのサーモンはまだ欲しい所じゃないのか?」


 待ってましたと言わんばかりのラースの横に並び、バラキアの後ろに控えている船員たちに目配せする。


「川下に網を張れ。一気に行くぞ」

 キョトンとする船員たちを横目に、僕は川の中洲にある大きな岩に向かって、爆弾を弾き飛ばした。


「……っ!川下で網を構えろ!」


 何が起こるかを察したバラキアが船員たちに叫んだ。慌てた船員たちが走る背に向かって、川の真ん中で爆発が起こり、巨大な岩が砕け散った。上がった水柱の後に残ったのは、爆破の衝撃波で気絶したサーモンたち。プカリと浮き上がって、激しい流れに飲まれ下流へと一斉に流れていく。何とか網を張る事に成功した翠鳥の船員たちが、大漁過ぎるサーモンに押し流されかけたのには、思わず笑ってしまった。


「噂に違わぬ、奇抜な作戦をする」

「お褒め頂き光栄だ」

「で、何が目的だ?」

「そのサーモンを分けてくれればそれで良い。だろう?」


 ラースに同意を求めれば、え?そうなの?と不思議そうな顔で返されて、思わず横っ腹に肘鉄を入れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る