第六幕『襲撃』

「船長、アカンで、グリズリーや!ホレ、川下の方にいんら!」

「おぉっと、恩は売っておくべきかねぇ」

「こんな所からどうする」

「近くまで走るかな!」


 バッと走り出したラースに続いて、僕たちも藪を抜けて走り出す。足場の悪い川辺で、大きめの岩を飛ぶように走り抜ける。走りながらラースが銃を構えて一発撃つ。その銃声に翠鳥の面々が一斉に此方へ視線を投げた。ラースの弾丸がグリズリーの額を掠めて注意を逸らした瞬間に、僕は手持ちの小型爆弾をヴィーボスカラートで着火しつつ、弾き飛ばす。パチィンと音を立てて着火した爆弾が宙を舞い、グリズリーの頭の上で破裂した。悲鳴を上げたグリズリーに、料理人とは思えないスピードで瞬歩したジョンが懐に入り込み、一太刀閃かせる。パッと散った鮮血が川に降り注ぐと同時に、グリズリーは絶命した。


 唖然とする翠鳥の一行に、ラースがニヤリと笑って口を開く。


「危ないところでござんしたねぇ」

「……お前、魔弾のラースか」

「ご存知とは嬉しいですなぁ」

「そっちは蝕眼のメーヴォ……噂はかねがね聞いているよ、死弾海賊団。金獅子に一杯食わせてやったそうじゃないか」

「良くご存知で」


 川を挟んでラースと対峙したのは、翠鳥海賊団船長のバラキアだ。噂は此方も聞いていたが、船員のみならず船長も見目麗しい美丈夫だ。倒したグリズリーを調理班の二人が引き上げて早速解体する横で、両海賊団の船長が睨み合っている。

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