第五幕『探索』

 そこは木々の合間から木漏れ日の射す美しいジャングルだった。しかし何処からともなく聞こえる鳥の鳴き声と、一時たりとも切れない何らかの視線を感じる。言い知れぬ緊張感がある朝靄の中、ジョンとその部下の料理班二名は周囲の空気を気にする事なく、道すがら見つけた果実や野草を収穫している。


「豪気だな……」

「アイツらにとっちゃ此処は食材の宝庫ってこったな」


 おもちゃ箱の中を漁る子供の様に目を輝かせる料理班の無邪気さと強靱さには恐れ入る。


「水の音がしよる」


 ジョンが先頭を切って足を速める。後を追えば、程なく川の畔へと辿り着いた。水嵩が中々にある大きな川だ。途端、魚が大きく流れに沿って跳ね上がった。


「しめた!サーモンや!」


 ジョンが喜び勇んで川へ飛び出そうとした瞬間、ラースがその腕を取った。


「待て、先客が居る」

「なんやて?」

「見ろ、対岸の川下だ」


 対岸の川辺に五人ほどの集団がいる。身なりからして同業者、海賊のようにも見える。しかしその絵面に違和感を感じるのは何故だ。


「おぉー……あのイケメン揃いの集団は間違いなく翠鳥だな」


 感心するような声を上げるラースに僕も目を凝らして見れば、確かにジャングルに不釣合いな顔の良い男たちが汗だくになってサーモンを獲っている、何とも不思議な光景が広がっていた。その奥にのそりと黒い影が動いた。

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