第八幕『交渉』
「サーモンは十匹もあれば十分や」
大漁のサーモンの分け前の交渉にはジョンがあたり、随分少ない数の条件を出していた。
「本当にそんなもので良いのか?」
「ウチはあんさんトコに比べたら小さな集団やからな。獲り過ぎはお天道さんに叱られっけん」
「……それでは対等な条件とは言えない」
何だか律儀な人なんだな。別に分け前がそれで良いと言うなら損がある訳でも無し、合意しておけば良いものを。
「ラース船長。この獲物以外にもちょっと話がある。乗るか?」
「……さぁて、それは案件次第ですかねぇ」
ひょっこりと言う具合にジョンの横に並び、不敵な笑みでバラキアに対峙する。さて、此処からはラースの交渉技術のお手並み拝見と行こう。
「聞くだけ聞いていけ。俺たちがこの島に来たのは食糧確保の他に、ある人物について捜索しているからだ」
「此処は無人島じゃないっけ?」
「概ねそう言う事になっているが、此処には隠者と呼ばれる、かつての大罪人が身を隠していると言う噂があってな。それの調査に来ている」
「で、その隠者のお宝でも持って帰って来いと?お国の相手をするのも大変だねぇ……」
ニヤリと笑うラースに、場の空気が凍った。切り捨てられても可変しくない台詞だぞ。肝が冷えた僕を他所に、ラースは会話を続ける。
「隠者様のお宝が何なのか、もしくはその分け前がどうなるか……そう言った事が分からねぇと」
話にならない。と、ラースが口を開いた瞬間、怒号と悲鳴が当たりに響き渡った。
「何だ!」
振り返ったバラキア船長の後ろで、控えていたはずの船員たちが倒れている。皆肩や足を抱えている。その傍に、小さな藪の塊が佇んでいる。そう、藪だ。草木の塊のようなそれから、手足が生えている。
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