第九幕『下準備』
メーヴォが金獅子を名乗る相手に浚われた。ただし、どうやら金獅子の名を語る偽物らしい。特徴は良く似ていたが、顔がまるっきりの別人だったそうだ。
「金獅子は一度見た事がありますが、あんな不細工面じゃなかったです」
「で、メーヴォを連れてそいつらは何処に行ったって?」
「丘の上の高級娼婦宿です。今日の午前に清掃屋が入ったそうです」
「よし、流石だな情報屋」
では作戦を説明しよう。清掃屋を装って忘れ物を回収しに来たと言って館の内部に潜入したら、館に火をつけて撤収。奴らが慌てふためく中、俺がメーヴォの救出に向かう。
完璧!
よぉし、と鼻を鳴らせた所で、港に新たに停泊する船を見つけた。海賊旗は見えないが、その船に見覚えがあった。
「……ほっほぉ。コレはこれは」
思いついた追加作戦に、思わずニヤリと笑いが出て来た。
「おいレヴ。清掃業者に扮装する面子を集めて置け」
急ぎ足で船長室に置いてあった愛用の銃を二丁と、ワイヤーボウガンを取りに走る。
「お頭はどうするんです?」
「ちょいと用事が出来た。おい鉄鳥。ちょっと俺に力貸せ」
バンダナの結び目にペトリとくっ付いた鉄鳥を伴い、俺は船を降りて港の桟橋を走った。木製の桟橋と、停留の際にローブをかける木製の杭の上をヒョイヒョイとテンポ良く翔けて行く。
今しがた入港した船を目掛け最短距離を走る。見間違えなけりゃアレは金獅子の船で間違いないはずだ。金獅子の偽物がこの辺りで大きなツラしている、とかそう言う情報が本人の耳に入っていて駆除のためにこの港に寄ったと、そんな所だろう。
だったら今ある情報を有効活用して、金獅子さんたちにもお手伝いして頂くに限りますなぁ!ニッヒヒ、と口元に笑いを一つ落として、俺は桟橋から背負っていたワイヤーボウガンを金獅子の船に向けて直接打ち込んだ。ざわつく声と、木に鉄が噛む音と手応えがして、一気に俺は船の壁を昇って甲板に颯爽と登場した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます