第十幕『金獅子』
「はぁい!金獅子海賊団の皆さん、こんにちは!」
ニッコリ笑って言った俺の鼻先に、銀色に輝く剣の切っ先がピタリと翳される。お?と横を見れば、そちらにも剣の切っ先が見える。あの一瞬の強襲で、十人はくだらない男たちが剣を抜いて侵入者に詰め寄っていた。いやぁ、流石金獅子。この息の合った連携に容赦なさ。一朝一夕で出来る連携では無いし、長年培われて来た経験は見事としか言いようがない。
「おい、お前なんだ?此処が金獅子の船と知ってのご登場か?」
長い金髪の男が凄みのある声で、剣を構える男たちの後ろから俺に声をかけた。額の大きな傷跡を誇示するように、金の髪をバンダナで押さえている。額の中央には折れた角の残骸が残っている。
「あ、アンタ金獅子の頭領だろ?」
「だったらなんだ?」
「ちょっとイイ話があるんですけど、聞いちゃあくれませんかねぇ?」
目の前にある切っ先をそっと下に押しやろうとするも、ピクリとも動かない辺り、鬼たちの海賊だってのは伊達じゃないって話か。
「……おい、お前ら剣を下ろせ」
いいんですか頭?と部下たちが口々に言いながら構えていた剣を収めた。ようやく一息吐けるってモンだ。
「おい、海藻頭」
はぁ?かいそう?海藻って言ったのかおいぃ?
「クラーケンのヒゲみてぇな緑髪のてめぇだよ、甲板に傷つけやがって」
言うに事欠いてクラーケンのヒゲとか!おい!ふざけんな!
「……なんでやしょ?」
いやしかし、ここで切れたら元も子もない。怒りに歪む顔をぐっと堪えて俺はにこやかに返事をした。
「その左の頭にくっ付いてんのは、青い鳥か?」
鉄鳥の事を指している。やっぱり金獅子もあの祠を訪れていたし、鉄鳥を手に入れようとしていたに違いない。頭に上っていた血がすっと引いていく。そうだそうだ、クールに事に臨もうぜ。
「アンタはコイツを青い鳥って呼んでたのか。残念でしたねぇ、その鳥はウチの仲間が手懐けちまいやしたよ」
「そいつの主が見つかったってのか」
「そうなんすよねぇ。で、ちょいと此方で厄介な事が起きてて、あんたらの力にもなれそうなんですが、ちょいと話を聞いて頂けませんかねぇ?」
渋い顔をした金獅子頭領に変わって、その横に居た神経質そうな男が「話を聞きましょう」と一歩前に出た。
よし、かかった。
「俺はヴィカーリオ海賊団船長のラースタチカ=フェルディナンド=ヴィカーリオだ。よろしく頼むぜ、金獅子さんたちよ」
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