第十一幕『娼婦宿』
丘の中腹にある高級娼婦宿は、元々何処かのお偉いさんの別宅だったらしい。何人も娼婦たちを侍らせていたが、海賊からの賄賂や横領が発覚し失脚。残された遺産とお屋敷は、娼婦たちがありがたく引き継いで、娼婦宿になったらしい。高級娼婦(コルティジャーネ)を名乗るだけあって、今でも海軍の高官や名だたる商人御用達らしい。そして金さえ払えば海賊だろうと客として迎え入れる。このご時世、信じられるモノは真っ当な価値ある金貨銀貨のみと言うワケだ。
クラーガ隊を中心に清掃業者になりすまし、館へ潜入させる。アイツ等はメーヴォを助けるためならと、自ら潜入役を買って出た。いつかアイツの人心掌握術とやらをご教授願いたいものだ。
裏口から三人の男たちが館へ入っていくのを確認し、俺はアンカーボウガンを背負い直し館を見下ろす丘の更に上を目指した。深淵が口を開けた夜半過ぎ。偽金獅子にヴィカーリオ海賊団へ喧嘩を売った事を後悔させてやる。
ぼんやりと発光し獣道を照らす鉄鳥を共に従え、館の裏手を見下ろす場所に陣取る。景観が悪く普通の客を通さない部屋が、こう言う立地の建物には大抵ある。普通の事情を持たない客が利用する料金割増部屋。
光を落とし、音もなく飛ぶ鉄鳥が、恐らく三部屋はあるであろう割増部屋を窓から伺う。その内の一番端の部屋を確認した途端ヒドく動揺するような動きをしたから、あの部屋で間違いないだろう。
「おい、帰ってこい、おいっ」
名残惜しそうにフワフワと帰ってきた鉄鳥に、念のため部屋を確認する。
「おい、あの角部屋で間違いないか?間違いないなら一回光れ。違うなら二回だ」
チカッチカ、と二回鉄鳥は光った。何だ違うのか?あの部屋に何があったんだ?まあ今は良いとしよう。
「ならメーヴォのいた部屋は角部屋からいくつめだ」
チカ、と一回点滅。
「角部屋の隣だな?」
ピカッと強く一度光った鉄鳥に、良し、と小さく呟く。更に丘の下に松明の明かりをいくつか確認する。そろそろ手はず通り清掃部隊クラーガ隊が、焼却清掃をおっ始める頃だ。
「よし、行くぜ!」
アンカーボウガンを屋根に向けて放ち、アンカーが咬んだのを確認すると俺は館の壁に一気に滑空した。窓の横に取り付いたついでに例の角部屋を覗くと、きっついSMが繰り広げられていた。鉄鳥くんはこう言うのが好きなのかい、と内心眉を顰める。海軍の制服がハンガーに掛けてあるから、大方海軍のお偉方だろう。日々の鬱憤でも溜まってんのかね……。
さて、囚われのウチの姫君はどうしてっかな?
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