第十二幕『救出』

 ちらりと部屋を覗き見ると、部屋に見張りはおらず、ベッドに横になるメーヴォの姿を確認出来た。腕をベッドの端に結ばれていて、まさに監禁状態。コートを着ていないし、シャツもグシャグシャだから、何事かはされたようだ。ざまあみろと言ってやりたいところだが、俺の所持品を勝手に荒らされたのは腹立たしい。

 ガシャンと窓を蹴り割って部屋に入り、まず銃を構えて入り口の扉に一発。パキン、と涼しげな音を立てて、扉が凍り付いた。


「……ラース」

「よう、お姫さん。気分はどうだ?」

「ハ、最高だよ王子様」


 鉄鳥がひゅんひゅんと飛び回ってメーヴォの無事を喜んだ。何がどうなってるのか、羽根飾りの部分がニュニュっと伸びて、メーヴォの腕を縛っているローブを切断した。


 起きあがったメーヴォの顔を改めて見ると、頬は腫れているし眼鏡が歪んでいて目元に痣もある。いかがわしい事じゃなくて、暴力的に何事かあったんだなコリャ。まあ、なんつーかそっちでヨカッタネ?


「助かったよ、ラース、鉄鳥。次は気を付ける」

「おぉ、素直だな」

「今回は単独行動をした僕に非がある。手を煩わせてすまなかった」


 あらやだ、ちょっと以外だわぁ。お前絶対謝らないタイプだと思ってた。

 ドンドンと扉を叩く音と、男の怒号が響いて来たから、外の見張りが気付いたってところか。


「散々ウチのを可愛がってくれたみたいで、お礼はたっぷりさせてもらうぜ!え?金獅子さんたちよ!」

「てめぇラース=ヴィカーリオか!こんの野郎!おい、斧を持ってこい!扉をぶっ壊してやる!」


 そんな悠長な事やってて間に合うかぁ?


「火事だぁぁ!」


 一階の窓を開けて男が大仰に叫ぶ。次々に火事だと叫ぶ男が三人、一階の窓や扉を開けながら叫び走り回る。クラーガ隊の焼却清掃が始まった。途端に館の中はパニックだ。半裸の男女が大慌てで出口を目指す。廊下の男たちも動揺している。


「おおっとぉ、さっさと逃げないと危険じゃありませんかぁ?それとも供物にお祈りするか?」

「キっサマ……っ!」


 顔を真っ赤にしているのが目に浮かぶ。あー楽しい!


「……僕のコートがない」


 突然どうしたかと思えば、メーヴォが渋い顔をして部屋中をひっくり返して漁っていた。


「僕のコートも帽子も、ヴィーボスカラートもない!」


 それは分かった。特注武器はともかく高がコートと帽子でそこまで必死になるか?

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