第十三幕『脱出』
「折角お前が買ってくれた物なのに」
「え、マジでそう言う事言っちゃうキャラだっけ?」
「ふざけてるのか」
「むしろこっちの台詞だよ?」
「ついでにアレにはこの一ヶ月で仕込んだ爆弾が全部隠してあったんだぞ」
「えぇ?何それ怖い。引火したらこの屋敷吹き飛ぶんじゃないの、それ」
メーヴォとの漫才をするウチに、館全体に火の手が回ってきたらしく、部屋に煙が入り込んできた。廊下の男たちも、ついに根を上げたようでドタバタと二階の窓から壁伝いに逃げ出していた。
「コートも帽子も、また買ってやるから、行くぞ!」
「……火薬も新しい武器もだ!」
「わぁかったよ!買ってやっから!」
ようやく納得したメーヴォを抱え、窓の外に吊り下がっていたボウガンを手に、再び滑車を巻き上げて屋根へ脱出する。館から続く通りでは、火から逃げ仰せた偽金獅子たちが、当の本人、金獅子海賊団に囲まれて小さくなっていた。
「金獅子の大将!あとよろしくお願いしゃーっす!」
屋根の上から叫べば、大柄な金髪の青年、金獅子海賊団の船長ディオニージがにっかり笑って手を振り返した。
「本人と知り合い……ではない、よな?」
「そうだな、この件で知り合いになったってところだな」
ニヤリと笑ってやれば、ボコボコの顔のハンサムが食えない男だ、と笑い返してきた。館の二階が激しく爆発して、ボボン、と一部の屋根が吹き飛んだ。
「やべぇやべぇ、そろそろトンズラしようぜ」
「……そうだな」
あーあ、自分のコートが爆発してるの気にしてるよ。案外みみっちぃな。
メーヴォを抱え、アンカーボウガンを丘の木へ放つ。勢いを付けて飛んだその先で、ウチの船医がそのデカい体で俺たちを受け止めた。
「よし、ずらかるぞ!」
火柱を上げて爆発四散していく館を横目に、俺たちはそそくさとその場を撤退した。
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