第三幕『介入』

 何故チンピラや人の話を聞かないグズたちは、皆一様に同じ台詞で人を引き留めようとするのか。かく言う私も、誰かを助けようとする時の台詞は在り来たりなものしか浮かばないから、得てしてそう言うものなのかもしれない。

 後ろでアラアラ、と感嘆を漏らしたラースを差し置いて、私は足を前に進めていた。


「彼、お困りのようですが?」


 棚の後ろを回ってチンピラたちの後ろに陣取り、手に持ったそれを男の背中に突きつける。


「あぁ?何だてめぇ」

「なるべく穏便に済ませたいんですがね」

「あ、アニキ、こいつ、銃持ってます……いま、俺の背中に」

「私の仲間が改造した特注の小型銃は、小さいながら中々の威力でしてね。コチラと、もう一人くらいならお腹の見通しが良くなることでしょうね」

「っ……こいつ、緑髪に赤い眼、銃の使い手……もしや魔弾のラース……っ!」


 中々ラースの名前も売れて来たと言う事か。当たらずとも遠からず。親類で顔立ちが似ているんだ。こう言う時は勘違いさせておくのがいい。


「さっさと店を出な。目障りだ」

 トーンを低めに威嚇すれば、そそくさと男たちは店を後にして行った。

「……ありがとうございます、ラース船長……ではないですね」

「どもー、本物の船長です」


 いつの間にか背後にいたラースがヘラリと笑って手を振ってみせる。


「コッチは副船長のエトワールです、金獅子の副船長殿」


 若干緊張気味の私を余所に、ラースが言葉早く紹介を終えてしまう。会釈をして、笑顔で返すしかない。それににこりと柔らかく笑った金獅子海賊団の副船長アデライド氏の麗しさを私の語録で表現出来るだろうか。


 ゲ ロ マ ブ !


 ああ、いけない。本性が露見してしまう。何て麗しい事か!一目見た時から思っていたが、本当にこの人は美しい。人ではない種の者が持つ特別な色香がある。この人を手元に置けたらどれだけ日々の生活が潤う事だろうか。その為にはあの金獅子海賊団船長ディオニージを打ち倒さないといけないが、中々高い目標だ。やり甲斐がある。

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