第十三幕『夢の終わり』

 南に向けた航海の六日目、目的の珊瑚諸島に到着した。エリザベート号を沖合いに停泊させて小型の船で無人島に降り立った。珊瑚が遠浅の浜を作り上げ、その浜が隣の珊瑚の島のそれとすぐ近くまで連接している事から、大きな帆船などは座礁しかねない、美しさと裏腹の危険海域や。


 海神の大旦那にもらった情報を元に、数ある諸島の中から小さな島を探し当てた。謎掛けのような一文から的確に場所を導き出しのたのは、メーヴォのチビ助の発想力の高さからだった。


「わぁーい!船長ぉー泳いでも良いですかー?」

「ヨッシャー!一緒に泳ぐか」


 宝探しも程ほどに、愛らしい子供の無邪気さにヴィカーリオ海賊団の面々は一週間と経たずに骨抜きにされてもうた。竜船長と海を泳ぐ少年の姿はまた絵になる。

 船長らが泳いでる間に、ワシらは食材探しに一潜り行ってくるとすっか。一時間ほど潜って魚や貝類を採った後、部下に船に持って行かせ、本日の昼飯分は上陸面子が浜で魚を焼いて食べた。小さな島の中の探索はあっと言う間に終わり、何の手がかりもないままその日が終わろうとしていた。


「ひとまず船に戻るか」


 野宿も楽しそうだと思っていたのかメーヴォのチビ助が少し渋ったが、結局全員船に戻って夜を明かした。


 翌朝、甲板でごろ寝しているラース船長(人)が発見され、七日目の朝を迎えた事に皆安堵と物寂しさを感じておったようじゃ。


「今日は何日だ……ついでに此処は何処の海域だ」


 物寂しさの張本人、しかめっ面のメーヴォの旦那がきちっとした身なりで甲板に出て来たのは程なくで、事の次第をざっくりと船医マルトや情報屋レヴに聞いとった。


「あぁーあ、可愛い坊やが何処へやら」


 泣き真似をしたラース船長の足元が小さく破裂して派手に転けとった。事情を知ったメーヴォの旦那がその一言に深紅の鞭を振るっとった。


「まさか記憶が飛ぶとは思わなかったよ。例の薬を飲んで体中が痛くなって、それ以降の記憶が全く無い」

「知らなくて良かったかも知れませんよ」

「……あなたがそう言うなら、そうなんですかね」


 マルトの言葉に素直に引き下がったメーヴォの旦那に皆一様におやっ?と疑問を抱いたようじゃ。


「……マルトが世話してたのがメーヴォに刷り込まれてるな。見えないメーターが上がってる気がする」

「あぁー、船長もそう思いまっか」


 あの様子だと、海軍への恨みも刷り込みれていそうやんな。こんな事態も想定していたって事かいな……海神の大旦那はんはホント恐ろしいお人や。

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