第十四幕『謎解き』

 事情を把握したメーヴォの旦那は今一度ニコラスの寄越した地図をじっと見ている。


「西の炎灯る時、高い木の上を調べろ。この文章なら、西日の指す方向、東の何処か……高い木は……無いみたいだから……西の火……西日の頃、高い木、木の影……」

「あぁーそう言う謎解き」

「あの島の木が西日で影を落とすあたりを徹底的に調べれば見つかるんじゃないか?」

「影の先ならぼくが操れますから、きっとすぐです」


 ん?と言う事はもう一日此処に停泊は決定かいな。思わず食料庫の中身を思い返してしまう辺り、大所帯の面倒も身に染み着いて来たっちゅう事か。その日一日、結局南の島の休暇になってしまった死弾の一行であった、とかなんとか。

 夕刻に差し掛かって西日が辺りを照らし出した頃。


「あった、ありました!」


 東側の海岸線に降りた影を操って砂の中を探索したレヴが嬉しそうに声を上げよった。影が一枚の布のように揺らめき、板のように砂に突き刺さっていくのは壮観やった。


 砂に隠された丸い扉が顔を出し、まるで舵のような大きな丸い取っ手を捻って開けると、暗い通路がその先に口を開けた。梯子の付いた通路をメーヴォの旦那から降りて行く。その左耳に付いた鉄鳥が明かりや。


 ワシは興味がなかったので地上で待機。が、中はずいぶん狭いらしく旦那と船長の二人で満員やった。時折旦那の嬉しそうな声が響いて来るんで、そこにあったのは間違いなくお宝で間違いなかったやろ。


「船長、メーヴォの旦那ぁ!そろそろ日が沈みきるで」

「あと今夜遅くには満ち潮で此処に水が入ってしまいますよ」

「なんだって!ラース!今すぐ!今すぐ此処の本を全部船に積み込もう!」

「えぇっ?ヤだよ!んな事言ったら今から篝火焚いて船を往復させてだぜ?明日にすれば良いだろ!」

「っ……火が近いのは困るな……なら、今何冊かで良いから先に船に。一晩読む分だけでいい!」

「って、お前一晩に何冊読む気だよ!」

「兎に角手当たり次第だ!」


 途切れない二人の声に、すっかり夜は訪れ、程なく両手いっぱいの本を抱えた調査隊がエリザベート号へと帰還したんやった。

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