第十一幕『恍惚』

「実際は何番目だ?」

「十三番目。彼女が一番綺麗に頭を吹き飛ばせた。首から先が綺麗に無くなったのは、本当に気持ちが良かったよ」


 へえ、と感嘆を落として、ニヤリとラースが嗤う。そうだ、その嗤いだ。僕が一番惹かれた、彼の深遠。


「殺した後に犯したけど、あんまり良くなかったな」

「え?マジで?殺した後にヤっちゃったの?」


 うわぁお、と声に出さず、しかし嬉しそうな顔で口が動く。何だ、興味津々だな。


「彼女とセックスする願望は少なくともあったんだけど、彼女の目が気に入らなくてさ。それがなければイケるのかなって思って」

「でも良くなかったと?」

「イくだけイったけど、何か違うなぁって。正直言うと女とのセックスはそれ以来興味が湧かない。お前がアレだけ女遊びをしているのが正直信じられない」

「マジかよー!お前そうなの!」

「今は技術書の解読とその検証実験にばっかり気が行くし、性欲を感じる前に殺戮で発散してる気がする」

「ハンサムなのに勿体ねぇのな!」


 一杯目のワインを空けて、削りチーズを広げつつ二杯目を注ぐ。それを合図に、お前は?とラースに視線を投げる。グラスを傾けてワインを注がれながら、ラースはその重い口を開いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る