第一章終幕

「エトワール、ジェイソン船長の出航予定は何時だって行ってたっけ?」

「カークマン氏なら、明日の昼頃に発つと行ってました。トウモロコシの収穫が終わったのと、我々が持ち帰った貴金属の売り渡し先が決まったとかで」

「ふぅん。そうすっと帰ってくるのは二十日くらい先だな」

「今は特に資金難を抱えている訳では無いので、また暫くは別行動、使役便によるやり取りで問題ないでしょう」


 だよな、と確認を取ったラースが再び僕に視線を戻す。


「メーヴォ、例のダイヤは後どれくらいかかるんだ?」

「アレが出来まで此処での生活をするとお前が干からびそうだからな。大丈夫、もうアレは安定したから、船に移動させて航海しながら待てる状態だ。コッチはいつでも出航出来る」


 あと正直な話、地下室の施設が何なのかを解析したり、残されている書物や手記を全て解読するとなると、僕は次の航海に出て行けなくなりそうだった。


「あれは此処に立ち寄った時の宿題にするよ」


 肩をすくめてやれば、ラースが不思議そうな顔で笑った。


「そっか、また此処に帰って来る気になってるワケか」

「此処は僕らヴィカーリオ海賊団のアジトだ……違うか?」

「違いないねぇ」


 クックと笑ったラースが、テーブルの上に海図を広げた。皆の視線が海図に集まる。その眼は一様に飢えを抱えていた。


 ある者は仲間の為に調理する食材を求め、ある者は未知の薬を手にしたいと望み、またある者は自分を試す試練を求めるように地図を見る。


 ある者は失った希望を取り戻すため、ある者はまだ見ぬ海を求め、ある者は主の力となる為にまだ見ぬ冒険の日々を海図に夢見る。


 ある者は手に入れた安寧をより強固にする為に。ある者は野望を抱き、ある者は世界の未知を求めて、大海の波間を海図に幻視する。

 

「さあ、次のお宝は何処に探しに行く?」


海賊寓話第一章、終幕

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海賊寓話 面屋サキチ @sakichi_O

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