第十四幕『作戦会議』
ある夜、酒場の円卓を囲んで、ヴィカーリオ海賊団の主要メンツが一堂に会していた。今後の方針について話をしたいと、ラースが皆を集めたのだ。早速口を開いたのはレヴだ。
「情報屋たちからの話ですが、ゴーンブール海軍の発行している賞金首の情報が更新されたとか。あと、銀狼海賊団が解散したそうです」
獣人のみで構成されると言う中規模海賊の銀狼海賊団は、人外のタフさを生かして難攻不落と言われた数々の迷宮や遺跡を制覇して来た腕利きたちの集まりで、海賊と言うよりはトレジャーハンターたちに近い集団だ。それなりの腕利きたちが突然の解散と言う事か。
「なんやて?マジか!ピエール船長はどうしたん?」
そして、ジョンはかつて海を渡るために銀狼海賊団に身を寄せていた時期があると言うのは聞いていた。
「大きな嵐で船が半壊して、船長は行方不明だそうです」
なんちゅうこっちゃ……と渋い顔をしたジョンだったが、一つ深く息を吐くと、その顔は平素の顔に戻っていた。
「……あの船長が早々に死ぬようなタマとちゃうで。またどっかで合う事になる気がしよるわ」
流石の芯の強さだなと感心しつつ、ちらりとラースが僕に視線を投げている事に気が付いた。つまり、地下室の進捗を気にしているのだろう。そろそろ子供たちとの海賊ごっこも飽きが来ているはずだ。
「……で、後は僕のところなんだが」
二日間みっちり掃除をして発掘したのは数冊の手記と幾つかの機械類。手記はかつて此処を拠点としたある集団のメンバーが書き記した物だった。それはどうやら例の珊瑚諸島で見つけた航海日誌の書き手と同一人物のように思えた。
「コイツが興味深い内容で、もしかしたら例の十二星座武器に繋がる記述があるかもしれないと、今解読をしているところだ」
「本当ですか?凄いじゃないですか」
ちなみに機械類のいくつかは技術書の図解に似たものを選別して修理、及び解体予定を立てている。
「僕の方でも蝕の民について情報を集めていますが、やっぱり随分古い事みたいで、中々有力な情報が集まらないんです」
「レヴ、どんな些細な情報でも、真意がハッキリしないものでもいいから、蝕の民についての情報は僕に回してくれないか?」
その真意を見定められる有力な証言者がいる、と左耳を指してやれば、鉄鳥がチカチカと誇らしげに点滅した。
「よぉし、じゃあメーヴォは早急にその手記の解読をしてもらうとして……ルイーサ、船の修理は後どんなもんだ?」
「はい、船の修繕はほぼ完了しています。あとは帆の修繕が少し。裁縫組がコールさんの衣装が終わったからと手伝ってくれてますんで、数日中……いえ、あと二日あれば完璧に」
「良い仕事ぶりだな」
にやりと笑ったラースに、ルイーサがその大きな体を縮めて照れて見せた。巨人族はシャイな人が多いのだろうか。ウチの二人が珍しいだけか。
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