第十一幕『変身』

「んっだよクッソォ!また負けたぁぁ!」

「旦那は顔に出やすいですねぇ」

「よく言われるよ。にしても、アイツら長ぇなぁ」


 ポリポリと額の大きな傷跡を掻きつつ、ポーカーに負けながらもあっけらかんと言うディオニージの旦那に、どんだけの大らかさだよと内心苦笑しつつ、イカサマで勝った銀貨数枚を懐に入れる。実はさっきジャッジ役を買収するのに金貨一枚払ったから、プラマイゼロなんだけどな。


「ちょっと見に行ってみるか?」

「ええ、お供しましょう」


 ディオニージの旦那の後ろについて船の奥に入る。自分も結構身長はある方だと思っていたが、それにしても旦那はデカい。大剣を振り回すと言うその怪力さに相まって、ずっと大きく見えるから恐ろしい。なるべくこの人とはお友達でいたいもんだ。


「おーい、様子はどうだー?」


 ノックもなしに医務室の扉を開けた旦那の横から扉の奥を覗き見る。そこに居たのは、青に染め上げられたドレスを着た緑の髪の美女で、コチラを見た途端に頬を染めたものだからドキリとしてしまった。


「ぅうわぁあぁぁぁぁ!」

「ちょっ、ちょっと!折角めかし込んでるのにその悲鳴はないんじゃない?」


 ダニエル船医に支えられ、椅子から転げ落ちるのを寸でて止められた美女の声に聞き覚えがあってハッとした。


「え、メーヴォ?マジで?」

「おぉー!綺麗に化けたなぁ!」


 ドカドカと足音を踏み鳴らせて旦那が医務室に入ってメーヴォを覗き込む。


「ダニエルのオカマ謎技術がこんなところで役に立つとはな!」

「謎技術は余計だコラ」


 今にも殴り合いを始めそうな二人を余所に、固まっているメーヴォに興味引かれる。どうせ六日後には横に連れて歩くのだから、その姿を見慣れておきたい。いや、だって俺今スゲェドキドキしてるよ?イチイチこんなに心拍数上げてたら作戦も何もないぜ。

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