第十幕『決断』
「船長、僕の町を攻撃した海軍かもしれないです!パーヴォの仇をとりたいんです!」
船長が、苦い顔をしている。確かに今先制攻撃を仕掛けてしまえば、例え海軍の戦艦であっても一隻なら敵ではないかもしれない。ですが、砲弾の届く距離まで接近した後、コチラの被害を最小限に乗り切れるだろうか。特に今、砲撃手長のメーヴォさんがこの有様で、的確な砲撃が出来るのだろうか。恐らく船長の憂いはそこです。
「船長!砲撃ならおれたちに任せて下さい!隊長に教わった事の真価を発揮させて下さい!」
そう言い出したのはクラーガ隊の副隊長率いる一同だった。ムッとそちらを見たドラゴンの瞳が、真摯な眼差しを投げかけます。
「まずエトワールの遠隔砲撃で敵脳天を打ち抜く。中距離から敵艦を旋回しながら砲撃で牽制。その後船を寄せて白兵戦に持ち込んで殲滅する。沈めない程度の足止め、その的確な砲撃が出来るか?」
まるで神託を告げるドラゴンのように見えた船長の言葉に、クラーガ隊が拳を握りしめて声を上げた。
「勇敢なる者の名にかけて!」
『クラーガと言うのは、蝕の民の言葉で勇敢と言う意味がある。お前たちは勇敢なる者の名を冠した部隊だと言う事を忘れるな』
時折クラーガ隊にメーヴォさんが口にしていた言葉を思い返して、隣で目を輝かせる少年にあの姿を重ねる。勇敢なる意志を、貴方は一介の海賊たちに授けた。
「よぉし、エトワール!強烈なキッスを一発かましてやれ!マルト率いる風力部隊、敵艦は十マイル先、二マイルまで距離を一気に詰めるぞ!各員配置に着け!」
「了解!」
一斉に各員が配置に着く。私は船の後方に着き、風の魔法を得意とする船員二人と円陣を組みます。三人分の詠唱を重ね、かざした六の手の中に風の塊を生成します。見張り台の上でエトワール副船長が再びフールモサジターリオを構えた。
「ぅってぇ!」
船長の合図にドゥン、と言う篭もった銃声が響き、反動で船が大きく揺れた。揺れが返るのに合わせて、私たちは手を広げられた帆に向けて風の道を造った。
「目標は海軍戦艦!往くぞ野郎ども!」
ドラゴンの雄叫びが船と海を轟かせた。
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