第四幕『島』

 アララト諸島。そこには世界の全ての生き物が存在していると、ある生物学者が言った自然豊かな諸島郡。豊か過ぎる自然ゆえに、人がそこで生活をするにはあまりにも脆弱で、ジャングルは獣たちの楽園となっている。暖流が流れ込む海には豊富な種の魚が存在する。また陸地にも豊かな生態系をはぐくんでおり、遠泳航海をしている船乗りたちの最後の補給所とも言える。


 ただし、陸にも海にも強者は存在するので、生半の腕で安易に食料品が確保出来ると思ったら大間違いだ。本当に逼迫した食糧事情にならない限り、滅多な事で船乗りはこの海域に近寄らない。


 だが、今我らヴィカーリオ海賊団はその逼迫した状況に置かれている。危険が待ちかまえていると知りながら、アララト諸島の中の比較的大きな島に上陸した。


 船長ラースと僕、料理人のジョン、あと調理担当部から二名の五人で森の中に入り、残りの船員たちは船で釣りと、素潜りが得意な者で海の探索に当たる。船医マルトの驚異的な肺活量と風の魔法を駆使した素潜りで、どれだけの魚を採ってくれるか今から楽しみだ、とジョンが笑っていた。銛のような槍を持ったマルトが何とも頼もしく見えたものだ。


「よぉし、各員解散!森の探索部隊は出発だ!」


 どうぞ気を付けて、と言って見送ってくれたマルトから、飲み薬一式(解毒・気付け・麻痺抜き・胃薬他)の携帯セットを受け取り、僕らは早朝の森へと足を踏み入れた。

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