第十四幕『吸血鬼』
「ラース!氷の壁を!」
ぼさっとするな!と怒鳴るメーヴォが爆風で霧を飛ばし、更に延焼弾で炎を起こして、何とか入り口付近で進行を止めている。
「もう俺も頭いっぱいなんだけど!」
文句を言いつつも、吹き飛ばされた扉の代わりに氷の弾丸を撃ち込んで壁を塞ぐ。あっと言う間に氷の壁は赤い霧が這い回って真っ赤になる。しばらくは何とかなりそうか?
「おい、貴様何者だ」
オーバーヒート気味の俺に変わって、冷静さを保っているメーヴォが、棺桶の中のミイラに話しかける。
「……なんです、あなた方。マリーベル様の従者です?」
「レヴを返してもらおうか」
「……何を言っているんです?マリーベル様は私がお護りするのです」
よく見れば、ミイラ男はボロになっているにしろ、なかなか良い仕立ての服を着ている。マリーベルってのはつまり。
「……あの、マリーベルは、僕のおばあさまの名前なんですけど」
気が付いていたのか、すっかり萎縮してミイラ男の腕の中にいるレヴがぼそぼそと口を出した。
「お、ばあさ、ま?……あなたは、マリーベル様の、お孫さんだと言うんですか?」
はい、と言ってレヴが申し訳なさそうにミイラ男を見上げる。その頬に血が伝っている。おい、結構な傷か?
「……ああ、しかし確かにこの香しい血の匂い。高貴なあの方の血で間違いない」
言うやいなや、ミイラ男がレヴの頬に流れる血をベロリと嘗め取った。ひぃや、と声を上げてレヴが抵抗するも、ミイラ男は血を嘗め取ることをやめようとしない。俺もメーヴォも呆気にとられて微動だに出来なかった。
骸骨に皮だけを張ったようなミイラの顔や手が、見る見る内に張りのある皮膚へと戻っていく。
「ああ、この甘露のような、魔力に満ちた血液。魔族の者が持つ高貴な血液。この味、間違いなくマリーベル様の血族のもの。ああ、香しいこの純潔の血」
「やめ、やめて下さいっ」
獣がそうするように傷まで舐められたレヴが、這々の体で元ミイラ男の顔を引き剥がす。
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